投稿日:2023年11月01日/更新日:2024年03月11日
グリーンウォッシュとは?企業が実施するべき対策法や3つの問題点を解説
グリーンウォッシュという言葉を聞いたことはありますか?
昨今のSDGsやエコ、サステナブルなどの環境問題への高まりとともに、認知された言葉です。
本記事では、グリーンウォッシュについて具体例や問題になった4つの企業を紹介。
また、グリーンウォッシュ対策法や3つの問題点なども徹底解説します。
ぜひ自社のグリーンウォッシュ対策に役立ててください。
グリーンウォッシュの意味とは
グリーンウォッシュとは、環境に配慮しているように見せかけて商品やサービスを提供すること。
エコや環境に良いイメージとして使用される「グリーン」と、「ウソをごまかす」や「取り繕う」を意味する「ホワイトウォッシュ」を合わせた造語です。
グリーンウォッシュの具体例
グリーンウォッシュの具体例は下記のとおりです。
- 「環境に優しい商品」とアピールしているが、製造過程で大量のCO2を排出している
- オーガニックな天然成分が配合されていると勘違いするようなデザインが施されている
- 環境に負荷がかかる商品にも関わらず、クリーンなイメージデザインを採用している
このように、消費者やエンドユーザーが勘違いするようなデザインやキャッチフレーズ、または商品やサービスのデメリットをごまかすことがグリーンウォッシュに当たります。
グリーンウォッシュで問題になった有名企業の事例
本章では、過去にグリーンウォッシュとして問題になった4つの有名企業を紹介します。
スターバックス
2018年にサステナブルな取り組みの一環として「ストローの要らない蓋」をリリース。
しかし、従来の蓋とストローの組み合わせよりも多くのプラスチックが含まれていることが判明しました。
マクドナルド
2018年に複数の店舗で始まった「プラスチック製ストロー」の禁止に伴って「100%リサイクル可能」とする紙ストローへと切り替えを実行。
しかし、当時の紙製のストローは分厚すぎてリサイクルできず、実際には捨てられていたことが明らかになりました。
H&M
2019年に発表した、リサイクル素材によるファッションコレクションの素材に対する使用量など信頼できる根拠がなかったため「違法なマーケティングの疑いがある」とノルウェー消費者庁から注意を受けました。
ライアンエアー
アイルランドの航空会社ライアンエアーは、2019年9月に発表した広告で「ヨーロッパで、最も環境負荷の低い大手航空会社」という内容でPRを行いました。
しかし、根拠が曖昧で誤解を招くと判断され、2020年2月には広告がグリーンウォッシュであるという理由から禁止処分を受けています。
グリーンウォッシュで起こる3つの問題点
企業がグリーンウォッシュを行うことや、ユーザーが知らずにグリーンウォッシュ商品・サービスを購入することで起こる3つの問題点を紹介します。
問題点は下記のとおりです。
- グリーンウォッシュを行っている企業へ利益が流れる
- ESG投資やグリーンボンドに悪影響が出る
- 大幅なイメージダウンにつながる
それぞれ解説します。
グリーンウォッシュを行っている企業へ利益が流れる
消費者やエンドユーザーが、グリーンウォッシュに気づかずに商品やサービスを購入してしまうことで、グリーンウォッシュ企業が儲かってしまいます。
間違った影響を与えるグリーンウォッシュ企業が儲かってしまっては、真っ当に取り組んでいるエコ・サステナブル企業へ利益が回りません。
帝国データバンクが発表した2023年上半期の企業倒産数は、6年ぶりに前年を31.6%も上回る「4006件」にものぼりました。
内訳は、サービス業・小売業・飲食店の順で多く、不況型倒産や破産が主な理由です。
本来のエコ商品やサステナブル商品は、割高な価格設定がほとんどです。
もしかしたら、グリーンウォッシュ企業の戦略や価格競争に勝てずに倒産した企業もあるでしょう。
これでは、本来のエコ商品が市場に流通せず、消費者たちの行動も無駄になってしまいます。
また「環境負荷が少なそうだな」「身体に優しそうだな」と、グリーンウォッシュに気づかずに「なんとなくのパッケージのデザインや雰囲気」で購入に至ってしまうケースが多いことも原因です。
わたしたち1人ひとりが、グリーンウォッシュを見破る力を付けることも大切だといえるでしょう。
ESG投資やグリーンボンドに悪影響が出る
2つめの問題点は、ESG投資やグリーンボンドへの影響です。
グリーンウォッシュは、投資家にも影響を及ぼします。
ESG投資 | 環境(Environment)社会(Social)ガバナンス(Governance)に考慮した投資 |
グリーンボンド | 環境問題の解決に取り組む事業に必要な資金を調達するために発行する積券 |
投資家たちは投資先を慎重に選ぶものですが、グリーンウォッシュを行う企業はさまざまな手口や方法を使って見抜けないようにしているため、間違った投資先へ投資してしまう可能性があります。
本来は「環境のためにサポートしたい」と思っていたのにも関わらず、真逆の企業へ投資をしてしまった……ということも。
大幅なイメージダウンにつながる
3つめの問題点は、企業のイメージダウンにつながる点です。
意図的でなかった場合や、グリーンウォッシュに対する理解がなかった企業に起こる可能性があります。
消費者やエンドユーザーは「裏切られた・騙された」と感じ、商品やサービスのネガティブな面を周囲の人に話したり、SNSへ投稿したりするでしょう。
SNSの爆発的な拡散力に晒されてしまえば、企業価値や企業ブランドなど大幅にイメージダウンするのは必須です。
イメージダウンにつなげないためにも、PR方法やキャッチフレーズ、パッケージ画像には気を付けましょう。
企業が実施するべきグリーンウォッシュ対策
本章では、企業がグリーンウォッシュ対策に活用できる2つの施策を紹介します。
主な施策は下記のとおりです。
- 「グリーンウォッシュの7つの罪」を活用する
- 「Green Claims Code」ガイドラインを活用する
それぞれ解説します。
「グリーンウォッシュの7つの罪」を活用する
「グリーンウォッシュの7つの罪(The Seven Sins of Greenwash)」とは、消費者がグリーンウォッシュを見極めるツールです。
アメリカの第三者安全科学機関UL SolutionsのScot Case氏が提唱しました。
企業が知ることによって意図的ではないグリーンウォッシュを防ぐことが可能です。
下記に「グリーンウォッシュの7つの罪」を記載します。
隠れたトレードオフの罪 | 原材料が環境に優しいものであったとしても、製造過程で環境汚染や破壊が行われている可能性がある |
証明しない罪 | 信頼できる第三者によって裏づけされていない、環境に良いという主張 |
曖昧さの罪 | 消費者が誤解する可能性が高く、定義が不十分で曖昧な表示や範囲など |
偽りラベルの罪 | 第三者認証がないにもかかわらず、言葉や画像を使用して「認証されています」と表示していること |
的外れな罪 | 環境に配慮した商品・サービスを求める消費者にとって、まったく役に立たないポイントや意味のない主張をしている |
「環境に良い」と宣伝する罪 | その商品のカテゴリーの中では環境に良い方に分類されるかもしれないが、カテゴリー自体が環境に良くないため悪影響を与える危険性があるもの(例:オーガニックの煙草) |
嘘をつく罪 | 環境に配慮していないのに「配慮している」と嘘をつくこと |
これらは、グリーンウォッシュに当てはまる場合があります。
かならず自社製品やサービスのチェックを行いましょう。
「Green Claims Code」ガイドラインを活用する
2つめは、イギリスで制定されている「Green Claims Code(グリーン クレーム コード)」ガイドラインを活用する方法です。
現在、日本にはグリーンウォッシュに対する明確な基準はありません。
しかし、問題を起こしてしまえばイメージダウンにつながってしまいます。
明確なガイドラインを活用することで、グリーンウォッシュを回避しましょう。
下記に「Green Claims Code」を記載します。
- 自社の製品やサービス・ブランド・活動が誠実で明確であること
- 消費者がそのメッセージをどう受け取るかを考えて製品情報と一致するようにする
- 重要な情報を省略しない・隠さない
- 製品の比較は公平で意味のあるものだけを行うこと
- 製品のライフサイクル全体を考慮すること
- 製品に関する主張は必ず信頼できる証拠(裏づけ)があること
ガイドラインを活用し、グリーンウォッシュを防ぎましょう。
消費者が本当に求めているものとは
2021年に発表された調査「The Global Sustainability Study」では、消費者の85%が「何かを購入する場合は環境に配慮していることが重要」としている。
さらに、多くの消費者が「持続可能な商品にもっとお金を払っても構わない」と考えているという結果が出ています。
エコな商品は多少高額でも受け入れる消費者が多く、多くの人がエコ商品を求めていることが分かりました。
そのため、グリーンウォッシュが加速する原因の1つかもしれません。
しかし、企業に求められるのはグリーンウォッシュではなく本来の「グリーン」や「クリーン」といえるでしょう。
まとめ:グリーンウォッシュを理解して企業価値を維持しよう
グリーンウォッシュとは、環境に配慮しているように見せかけた商品やサービスを提供することを表した造語です。
意図的か故意か、はたまた不注意かは関係なく、グリーンウォッシュだと指摘されることでさまざまな問題やデメリットに直面してしまいます。
企業価値やブランド力を守り育てていくためにも、紹介した対策法を試してグリーンウォッシュ対策を始めましょう。