投稿日:2024年11月26日/更新日:2024年11月26日
企業防災とは|企業における防災対策5選と取り組み事例を紹介
地震大国といわれる日本では、2011年の東日本大震災以降、防災意識が高まっています。
地震や台風、豪雨などの災害は、従業員や企業に大きな被害をもたらします。
被害を受けても従業員や顧客を守り、事業を続けるためには、企業防災が欠かせません。
この記事では、企業防災の必要性や防災対策、被災時の対応を解説します。
持続可能な企業として発展するための参考にしてください。
企業防災とは
企業防災とは、災害が発生したときに従業員や顧客の安全を守り、設備の被害を最小限におさえる備えのことです。
日本では、自然災害による被害が年々増加傾向にあり、防災対策への意識が高まっています。
企業防災は「防災対策」「BCP(事業継続計画)」の2つの軸で対策をおこないましょう。
防災対策
防災対策は、災害が発生した際のリスク評価を事前におこない、災害にあらかじめ備える取り組みを指します。
主に以下のことがらが含まれます。
- 命を守り二次災害を防ぐ
- 帰宅困難者の発生防止
- 飲料や食料品の備蓄
- 防災訓練・初期消火訓練
- 建物の耐震補強
- AEDを用いた応急救護訓練
企業防災の目的は、従業員や関係者の安全を確保し物的被害を最小限にとどめる点にあり、業務の継続や復旧対策には重点を置いていません。
BCP(事業継続計画)
BCP(事業継続計画)とは、自然災害などの非常時に、事業への影響を最小限におさえて事業の継続や早期の復旧を図る計画のことです。
BCPを行うことで、企業価値の向上にもつながります。
- 災害が発生した際、事業に影響を及ぼすリスク評価
- 優先すべき「復旧業務の順位付け」と「再開手順(計画)」
- 代替施設の確保
- データのバックアップ
- 人員を配置する手順
災害時にも事業活動を継続するためには、こうしたシステムにより従業員たちとスムーズに連絡を取り、協力し合わなければいけません。
そのための、安否確認システムの導入なども求められます。
BCP対策は、物理的な災害対応だけでなく、情報技術の運用や管理など幅広い計画を含んでいます。
企業が防災に取り組むべき理由3つ
企業が防災に取り組むべき理由は以下の3点があげられます。
- 従業員の安全配慮義務があるため
- 帰宅困難者対策条例があるため
- 顧客からの信頼獲得のため
それぞれ見ていきましょう。
従業員の安全配慮義務があるため
企業における安全配慮義務とは、従業員や関係者の安全確保のために企業が背負う法的・倫理的な責任です。
労働契約法第5条では、労働者の安全への配慮について「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められています。
経営者側がこの義務を果たさないと、損害賠償を請求される可能性もあります。
また、経営者は「労働安全衛生法」のもとで、快適な職場環境の形成をおこなわなければいけません。
そのための適切な防災訓練と安全装備の着用や危険物の取り扱い、事故防止対策の実施なども、従業員の安全配慮義務に含まれます。
帰宅困難者対策条例があるため
東京都では、東日本大震災を機に「帰宅困難者対策条例」を施行しました。
帰宅困難者対策条例には、自助・共助・公助の考え方に基づいて「むやみに移動を開始しない」という基本原則があります。
この基本原則は、災害時に従業員が一斉に帰宅することによる交通網への影響や、緊急車両の稼働の妨げになるのを防ぐのが目的です。
東京都では、地震発生時に3日間待機できるように、1人につき3日分9食の備蓄に努めるよう、条例として求めています。
また、埼玉県や千葉県などは、近隣都市と連携して「帰宅困難者対策」に取り組んでいます。
参照:東京都帰宅困難者対策条例|東京都防災ホームページ
顧客からの信頼獲得
災害時に的確な対応をしていれば、自社被害を抑制し、企業としての信頼性を向上できるでしょう。
たとえば、災害により停電が発生しても早く復旧できれば、顧客からの大きな信頼を得られます。
企業における防災対策5選
企業では、防災マニュアルやBCPを策定し、災害にそなえる必要があります。
この章では、企業で必要になる防災対策を5つ紹介します。
マニュアル整備や周知
非常時の混乱を防ぐために、マニュアルの整備や周知を徹底しましょう。
災害への初期対応手順や役割分担まで規定します。
- 総責任者
- 各部署への情報連絡係
- 救護係
- 避難誘導係
- 避難場所の指示
作成したマニュアルは、定期的に内容を見直し、必要に応じてアップデートしておきましょう。
防災マニュアルの目的は、人命や施設などの資産の保護・業務や施設の回復などがあります。
しかし、何よりも人命の安全確保が最優先されなければいけません。
備蓄品の管理
帰宅困難者が発生した場合に備えて、オフィスに備蓄品を用意すると安心です。
従業員全員の3日間分の水と食料があれば、交通機関の復旧まで会社で待機して救助を待つ場合も、安全に過ごせます。
防災グッズを入れた箱や袋には、備蓄品の量やうちわけ、使用期限をわかりやすく記載してください。
優先度の高い備蓄品は以下の通りです。
- 水:社員1人につき9リットル
- お湯で温めるご飯:社員1人につき9食
- 缶詰:社員1人につき9食
- 乾パン: 社員1人につき1~3食
なお、水や食料などの備蓄に余裕がある場合は、地域住民に提供するなど、地域社会への貢献も同時におこないましょう。
オフィスの耐震対策を実施
オフィス内の什器などの転倒・落下によるケガや避難通路確保を行いましょう。
- コピー機やキャビネット、照明機器などを固定する
- 窓ガラスに飛散防止シートを貼る
また、避難経路の近くには物を置かないなどのルールを徹底しておくのもポイントです。
防災訓練の実施
災害が発生した際に従業員や関係者の安全を確保するために、以下のような防災訓練をおこないましょう。
- 地震や火災発生時の避難誘導訓練や初期消火訓練
- AEDの使い方指導や心肺蘇生法を学ぶ応急救護訓練
- 負傷者の救出や搬送の手順をシミュレーションする救助訓練
また、訓練と合わせて、防災備蓄品の使用方法についての講習も実施するとよいでしょう。
従業員の危機意識を高め、災害の教訓を風化させないためにも、訓練は定期的におこないます。
防災訓練は実施したら必ず結果を振り返り、必要であれば防災マニュアルを改善してください。
BCP(事業継続計画)の策定
BCPは被災した際に事業資産の損害をおさえ、早期に復旧し、事業を継続するための方法・手段などを決めておく計画です。
自社の生産拠点や仕入れ先が被災した場合を想定し、代替案を定める必要があります。
- 災害時のロールと責任
- 事業継続のための具体的な手順
- 重要なビジネスプロセスの復旧方法
直接の被災だけではなく、従業員が出社できない場合や、ライフラインやITシステムに制限が生じ、仕入先や取引先に仕事の依頼ができないときにスムーズに事業を再開する方法を考えて作りましょう。
また、リモートでデータを扱っても情報がもれないセキュリティ体制を構築し、在宅勤務が可能な環境を整備するのも有効です。
災害対策に向けた企業の取り組み事例
最後に、災害対策に向けた企業の取り組みを紹介します。
ぜひ、災害対策の参考にしてください。
第一生命ホールディングス株式会社
第一生命グループでは、グループで保有から運用と管理まで行っている5つの物件に対して、防災備蓄サービスの「あんしんストック」を導入しました。
「あんしんストック」は、地域全体の防災力向上であり、SDGs(持続可能な開発目標)の目標11「住み続けるまちづくり」の実現を目指すためのサービスです。
防災備蓄品をサービスを導入している不動産に貯蔵し、災害が発生した際には、テナント企業や入居者、導入物件周辺エリアの契約者に防災備蓄品を提供します。
なお、賞味期限が近付いた防災備蓄品については、フードバンクや子ども食堂などに寄付し、地域課題解決やフードロス削減にも取り組んでいます。
セブン&アイホールディング
セブン&アイホールディングスでは、人命を最優先にしながら地域社会のライフラインとしての役割を果たすべく、営業の継続と早期再開が目標です。
BCP(事業継続計画)の観点では、商品配送車両に使う燃料の確保がもっとも重要です。
セブン&アイホールディングスでは、国内小売業としては初の「備蓄基地」を北葛飾郡に設置。
備蓄基地には、燃料400klが常時備蓄されており、災害発生時には最大10日間、緊急物資や商品の配達が可能です。
参照:災害における支援|セブン&アイホールディングス
日本空港ビルデング株式会社
2016年からターミナルビルで働く全てのスタッフが防災要員となる取り組みをおこなっています。
具体的な取り組みは以下の通りです。
- 入居者による「共同防火・防災管理協議会」を組織して、定期的に講習会を開催
- ポケット版防災マニュアルを空港内の全従業員(約3万人)に配布
- 年間を通じた各種訓練を実施
羽田空港国内線旅客ターミナルビルで働く全ての人が災害発生時に動ける体制を構築。
また、災害時に留まると予想される帰宅困難者11,000人分の飲料・食料を3日分備蓄し、避難所に商品を提供する予定です。
参照:防災・防犯への取り組み|羽田空港ターミナル公式サイト
まとめ
企業防災とは、災害が発生したときに従業員や顧客の安全を守り、設備の被害を最小限におさえるための対策です。
防災対策だけでなく、BCP(事業継続計画)も策定し、事業への影響を最小限におさえて事業の継続や早期の復旧を図らなければいけません。
そのためにマニュアルを整備し、平常時から災害に備える必要があります。
企業での取り組み事例も参考にし、持続可能な企業をめざしてください。