投稿日:2025年08月22日/更新日:2025年08月22日
SDGsを達成するためのAI活用事例10選|サステナビリティ領域で利用されるAI技術とは?
各業界でSDGsに対する取り組みが活発化する中で、どのように取り組んでよいか悩むものです。
また、効率化を図れるかも重要なポイントとなり、AIを活用できないか検討されている企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、SDGsの達成に寄与したAIの活用事例を紹介するとともに、具体的に活用きる分野について解説します。

- SDGsとAIは共存可能
- SDGsでAIが活用できる主な2つの分野
- SDGsを達成するためのAI活用事例10選
- ①AI活用によるエネルギー削減(DeepMind)
- ②デマンドレスポンスシステムによるエネルギー量削減(ウォルマート)
- ③AI活用による自動発注で食品ロスを低減(リンガーハット)
- ④魚の食欲自動判定でスマート養殖(ウミトロン株式会社)
- ⑤違法漁業監視AIの開発(グローバルフィッシングウォッチ)
- ⑥衛星画像を用いた駐車場用スペースの自動検出(akippa株式会社・インターネット株式会社・リッジアイ)
- ⑦ドライバーの待機時間を大幅に低減(3Gサポート株式会社)
- ⑧AIを活用した個別学習プログラムの導入(ベネッセコーポレーション)
- ⑨音声検知により森林伐採を監視(Rainforest Connection)
- ⑩企業のSDGs格付け指標の算出(サステナブル・ラボ株式会社)
- まとめ
SDGsとAIは共存可能
AIが持つ能力とSDGsは非常に相性が良く、十分共存することは可能です。
たとえば、AIが農業に関連するデータを正確に分析することができれば、無駄な資源を使用することなく効率よく農作物を育てたり、収穫できたりします。
また、AIが消費者の行動を正確に予測することで、適切な食品受注量の推測が可能です。
過剰な食料品の供給をカットすることができれば、食品ロスの問題もクリアできる可能性も高まるでしょう。
以上のように、SDGsとAIは共存可能であり、いかにAIを使いこなせるかが重要なポイントとなります。

SDGsでAIが活用できる主な2つの分野
AIが活用できる分野としては、主に以下が挙げられます。
- SDGsデータの分析
- 仕事の自動化
それぞれの具体的な活用方法について、詳しく解説します。
SDGsデータの分析
SDGsを達成するためには、多くの情報やデータを収集して分析しなければなりません。
この作業では、AIが持つデータ分析能力が大きな役割を果たします。
特に、AIは膨大なデータを素早く処理したり分析したりできるので、データの中から有益な情報をピックアップすることが得意です。
データ分析により得られた結果から、SDGsの各目標に対して抱えている課題を解決する手段の提案に繋げることができます。
仕事の自動化
AIを活用すれば、仕事の自動化を図ることが得意です。
自動化の能力を有効活用して、型が決まっている作業は高速かつ高精度で実施できるようになります。
人間が面倒な作業に対応する必要がなくなると同時に、作業時間の大幅な短縮にも寄与できます。
さらに、作業精度が高いため人による作業において発生しがちなヒューマンミスが発生しない点も魅力です。
SDGsを達成するためのAI活用事例10選
SDGsを達成するため、各企業や団体ではAIを活用して対応して成果を出した事例があります。
ここでは、以下のAI活用事例を紹介します。
それぞれの事例について、詳しく見ていきましょう。
①AI活用によるエネルギー削減(DeepMind)
2018年当時、Google傘下であったDeepMind社では、データセンター内にて大量の電気を使用するため、省エネ対策が課題となっていました。
そこで、エネルギー効率を向上させることを目指し、データセンター内に数千個ものセンサーを設置し、AI管理を実行。
センサー監視のデータより、最適なタイミングで装置を起動する仕組みを構築し、最大で40%もの電力削減に成功しています。
②デマンドレスポンスシステムによるエネルギー量削減(ウォルマート)
アメリカの大手スーパーマーケットチェーン店として有名なウォルマートでは、デマンドレスポンスシステム(電力の供給や需給バランスをとること)を有効活用して、エネルギー消費の削減に成功しています。
細かな温度のデータを取得するためにコントローラーを冷蔵庫に設置し、店舗担当者がコントローラーを通じて利用状況を把握できる仕組みを構築。
それによって、各商品の冷蔵棚に設置しているセンサーより情報を吸い上げ、品質が低下しないように温度調節ができるようになりました。
③AI活用による自動発注で食品ロスを低減(リンガーハット)
長崎ちゃんぽん専門店として有名なリンガーハットでは、データを基として売上を予測するAIシステムを活用した、Web発注システムを開発。
食材の必要数と推定在庫をベースとして、日毎や店舗毎に発注数を自動で算出するシステムを構築。
これによって、食材ロスの削減や人的コストや人的ミスの防止に成功しています。
④魚の食欲自動判定でスマート養殖(ウミトロン株式会社)
早くからAIを積極的に導入しているウミトロン株式会社では、養殖場の画像と水温や塩分などのデータを解析し、魚の食欲に合わせて最適な餌やりを実施する仕組みを開発しています。
UMITRON FAI(Fish Appetite Index)という独自開発したスマート給餌機で、リアルタイムで餌やりのスケジュール変更や量の調整などが可能です。
また、UMITRON FAI以外にも、衛星データを活用した養殖者向け海洋データベースなども開発しています。
⑤違法漁業監視AIの開発(グローバルフィッシングウォッチ)
世界的に、IUU(国際的なルールや各国の法律を無視して行われる漁業活動のこと)と呼ばれる、違法で無報告、無規制で行われる漁業が世界中で問題視されています。
これは、禁止種や禁止区域での密漁だけでなく、漁獲量の虚偽報告や違法な漁法なども含まれます。
IUU漁業を行う船に対し、沿岸では各国の沿岸警備隊が監視し状況をチェックしているが、監視の目をくぐり抜けて違法行為を行う船も少なくありません。
特に、一旦外洋に出ると海は広大であり公海では監視が困難な状況です。
そこで、IUU漁業の実態の透明性を高めてサステナブルな漁業を目指して誕生したのが、国際NPO団体であるグローバルフィッシングウォッチです。
グローバルフィッシングウォッチは、国際条約によって一定の規模の船舶に対して搭載が義務化されているAIS(自動船舶識別装置)と、衛星による船舶監視システムであるVMS(衛星船位測定送信機)などの公開データを活用し、世界の海洋上の船舶を検知。
さらに、機械学習を活用し漁業活動を識別する独自アルゴリズムを構築し、リアルタイムモニタリング情報をAPIで配信しています。
2023年には世界中から約90億円のファンドを集めることに成功しており、約80,000隻の漁船を常時監視しています。
⑥衛星画像を用いた駐車場用スペースの自動検出(akippa株式会社・インターネット株式会社・リッジアイ)
akippa株式会社では、akippaと呼ばれる全国の空いている月極や個人の駐車場や、空き地などの遊休地を駐車場として一時利用可能なシェアリングサービスを提供しています。
ドライバーから駐車スペースに対するニーズが高まっている一方、新しい駐車場スペースとして活用するための遊休地を見つけるためには実際に現地に行って開拓をする必要がありました。
実際にこの作業を行うためには、手間と時間がかかるという課題があったため、衛星データとAI技術を活用して特定エリアの自動車駐車用スペース候補を自動検出可能なモデルを開発しました。
システム開発後、福岡と札幌において実証実験した結果、約80%の精度で駐車場に適した場所を発見できています。
⑦ドライバーの待機時間を大幅に低減(3Gサポート株式会社)
3Gサポート株式会社では、トラック物流改善システムであるAirDia(エアダイア)にAIを実装する際にUMWELTを導入し、トラックバースの空き状況の見える化を実現しました。
働き方改革の流れを受けて、長時間の拘束ができなくなることから、物流業の効率化が特に重要なポイントとなっています。
特に、トラックドライバーの無駄な待機時間を発生させないかが重要な課題となっている中で、AIを活用して荷物量や作業時間を予測し最適な物流ダイヤの構築に寄与しています。
⑧AIを活用した個別学習プログラムの導入(ベネッセコーポレーション)
学習教材などの提供で有名なベネッセでは、自由研究おたすけAIと呼ばれるサービスを提供しています。
これは、自由研究のテーマを決める過程において、入力内容を受けてアドバイスするというものです。
答えではなく、自由研究のヒントを提示してくれることにより、AIの活用による思考力低下を防止している特徴があります。
⑨音声検知により森林伐採を監視(Rainforest Connection)
アメリカのNPO団体であるレインフォレスト・コネクション(RFCx)では、熱帯雨林の違法伐採を阻止することを目的として、スマートフォンを用いた監視装置を開発しています。
AIによりチェーンソーや木材搬出用のトラックの音を識別し、現地の携帯電話網を有効活用して自然保護官に連絡を取ることができるユニークなシステムです。
これにより、従来の監視システムと比較して迅速な出動が可能となりました。
インドネシアの森でテストした結果、装置はうまく作動して2日目には違法伐採の集団を発見することに成功しています。
⑩企業のSDGs格付け指標の算出(サステナブル・ラボ株式会社)
サステナブル投資を行う際、どの企業に投資すればよいかについて、即座にジャッジするのは難しいものです。
そこで、サステナブル・ラボ株式会社が提供しているデータプラットフォームであるTERRAST(テラスト)が有効活用されています。
TERRASTでは、ESGやSDGsに対する貢献度をビッグデータより指標化する、独自のAIアルゴリズムを開発。
企業のCO2総排出量やガバナンスといったESG情報をはじめ、財務指標との相関について、機械学習モデルにより解析して企業分析を行います。
これにより、通常数時間かかるESG分析をわずか「3分」で可能としました。

まとめ
SDGsに対し、各企業において創意工夫しながら対応しています。
理念は理解しつつ、いかに効率良く対応できるかが重要なポイントとなっています。
今回紹介したように、AIを活用すれば様々なシーンで役に立てるものです。
SDGs以外の領域にも役立てるAIを有効活用して、効率よく各業務に対応しましょう。
