投稿日:2023年09月21日/更新日:2023年12月04日
レジリエンスとは?企業に求められるSDGs施策の重要性と事例3選
レジリエンス(resilience)とは、強靱性・回復力・復元力・耐久力・弾力などと訳される言葉で、SDGsやビジネスで注目を集めています。
しかし、レジリエンスがどのようにSDGsやビジネスに有効的に働きかけるのか、いまいちよく分からないと思っているビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。
本記事では、レジリエンスの意味やSDGsとビジネスにおける重要性を解説。
また、企業事例も紹介しますので、経営やビジネス、自社SDGs施策の参考にしてください。
SDGsでのレジリエンス
2015年にSDGsが国連で採択されたことで、SDGs目標の中に何度も登場するレジリエンスという言葉に注目が集まりました。
SDGsでレジリエンスは「強靱性」や「対応力」と訳されます。
ほかにも「自発的治癒力」や「危機管理能力」という意味も含んでいると考えられるでしょう。
SDGsの項目のうち、レジリエンスが使われている目標は下記のとおりです。
- 目標1:貧困をなくそう
- 目標2:飢餓をゼロに
- 目標9:産業と技術革新の基盤を作ろう
- 目標11:住み続けられるまちづくりを
- 目標13:気候変動に具体的な対策を
- 目標14:海の豊かさを守ろう
それぞれ、レジリエンスな取り組みが重要視されています。
ビジネスでのレジリエンス
ビジネス上で使われるレジリエンスは「復元力」「弾力」などと訳されます。
特にビジネス上で認識されているレジリエンスは「組織レジリエンス」で、企業や組織において社会や市場環境の変化によるリスクや困難を乗り越えて適応する能力のこと。
組織レジリエンスは、BSI(英国規格協会)の規格BS 65000では「組織が存続し繁栄するためには漸進的な変化や突然の混乱に対して予見・準備・対応・適応する能力」と定義されています。
困難や課題を乗り越えて変化に適応する能力は、従業員のストレス耐性の向上や離職率の低下、企業価値、ブランド力強化につながります。
また、ステークホルダー(株主・経営者・従業員・顧客・取引先・金融機関・行政機関・各種団体など企業と関係があるあらゆる利害関係者)へのアピールも可能です。
そして新しいビジネスの拡充や販路開拓、投資家からの融資を受けるきっかけにもなるでしょう。
このようにビジネス上でもレジリエンスが注目されています。
レジリエンス経営の必要性とメリット
「レジリエンス経営」とは、市場の変化や災害に柔軟に対応し、ビジネスをストップさせず継続する経営方法のことです。
レジリエンス経営は、従業員や社会、市場から大きく期待が集まっています。
- 従業員側のメリット:仕事のパフォーマンス向上や臨機応変に対応する力が高まること
- 企業側のメリット:企業・ブランドイメージの向上につながること
企業のサステナブル(持続可能)な成長を継続するためには、レジリエンス経営は欠かせない手法といえるでしょう。
SDGsとレジリエンス経営
SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」では、働きがいのある人間らしい仕事ができることを提案しています。
レジリエンスを身に付けた従業員は、やりがいを感じながら長期的な仕事を通じて学習・成長し続けることで、企業価値が高まり持続可能な成長が可能になるのです。
また、レジリエンス経営と似た考え方に「健康経営」「ウェルビーイング経営」がありますが、違いは以下の通りです。
健康経営 | 従業員の心身の安定によって労働生産性の向上や離職率の低下を図り、業績・株価などの企業価値の向上を目指すこと |
ウェルビーイング経営 | 従業員の健康や高いエンゲージメント、いきいきとした組織づくりで企業の存在意義の達成を目指すこと |
健康経営は企業視点で従業員の健康をサポートし、一方のウェルビーイング経営は従業員視点で企業パーパスを目指します。
レジリエンス経営は、これらの健康経営やウェルビーイング経営などと相互作用しあいながら、SDGsの目標達成につながる重要な手法といえるでしょう。
レジリエンス経営の成功事例3選
本章では、レジリエンス経営に成功した企業を3社紹介します。
- ユニ・チャーム株式会社
- キリンホールディングス株式会社
- サイボウズ株式会社
それぞれ解説します。
ユニ・チャーム株式会社
ウェルネスケアやペットケアなどの関連製品を販売しているユニ・チャームでは、2030年のありたい姿を示した「Kyo-sei Life Vision 2030 ~ For a Diverse, Inclusive, and Sustainable World ~」を2020年に公表。
SDGs達成に貢献することを「Purpose(存在意義)」と考えて「Mission」「Vision」「Value」の三つの階層に分けて具体化しています。
- 「Mission」は共生社会の実現を明確にする
- 「Vision」は人の負担解放と夢の実現に貢献する
- 「Value」は統一されたマネジメント・モデルを推進する
社員全員で「共振経営」をすることにより、環境問題や社会課題の解決、消費者や地域社会への貢献と、継続的な事業成長を同時実現することを目指しています。
キリンホールディングス株式会社
ビールメーカーと清涼飲料水メーカーなどを傘下を持つ持株会社のキリンホールディングスでは、「キリングループ環境ビジョン2050」を公表。
生物資源・水資源・容器包装・気候変動の4つへポジティブなインパクトを与えることを目標に取り組くみ、顧客やステークホルダーと協働し自然と人にポジティブな影響を創出することで、こころ豊かな社会と地球を次世代につなげると掲げています。
また、レジリエントにつながる多様性への対応を積極的に推進。
2006年には「ポジティブアクション宣言」を発表し、女性社員が自主性・創造性を発揮して、いきいきと働く環境を整えることを必須課題に据え置きました。
個々の従業員の多様性について多くの施策を推進するだけでなく、そこから生まれる新たな課題の克服を図っています。
サイボウズ株式会社
ソフトウェア開発会社のサイボウズでは、「100人いたら100通りの働き方」があるとして、全メンバーそれぞれが望む働き方を実現できるような施策を実行しています。
- 育児・介護休暇制度
- 働き方宣言制度
- 育自分休暇制度(退職後最長6年間は復帰可能)
- 副(複)業許可
など、離職率28%を記録した2005年以降は組織や評価制度を見直し、ワークライフバランスを整え社内コミュニケーションを活性化する施策を実施。
その結果、現在の離職率は3~5%程度に留まっています。
また、回数を重ねてブラッシュアップしていくアジャイル型の人事にも取り組み、日々改善をくり返しながらレジリエンス経営を進めています。
まとめ:SDGsとレジリエンスでVUCA時代を乗りこなす
未来の予測が難しくなっているVUCA(ブーカ)時代。
環境の変化が激しい過渡期の現在では、社会・企業・個人もすべての人がどれだけ「臨機応変」に対応できるのかが大きな課題です。
時代の移り行く歩幅に合わせて柔軟に新しい風を取り込んでいきましょう。