投稿日:2024年12月09日/更新日:2024年12月09日
企業とメンタルヘルスケアの重要性とは?3つのメリットや実施方法
現代社会ではストレスや精神的な負担が大きく、メンタルに不調をきたす人が増えています。
メンタルの不調は個人の問題だけでなく、社会全体の健康や生産性にも大きな影響があるため、企業でもメンタルヘルスケアは非常に重要です。
現在、大企業ではメンタルヘルスケアの導入が義務化されていますが、中小企業では導入に遅れがあります。
また、実際の取り組みの程度に差があり、不十分なケースがあるのが現状です。
デリケートな問題故に、導入を悩んでいる方も多いでしょう。
そこで本記事では、企業とメンタルヘルスの重要性を解説します。
導入のメリットや実施方法も詳しく紹介するため、ぜひ参考にしてください。
メンタルヘルスケアとは?
こころの健康状態(メンタルヘルス)を、維持や改善に取り組むことを「メンタルヘルスケア」と言います。
メンタルへルスケアは、働くすべての人が対象です。
健康的に働けることで、生産性やパフォーマンス向上、労働力の確保を目的としています。
そのため、メンタルヘルス不調の早期発見・早期対処が重要なポイントです。
企業とメンタルヘルスケアの重要性2ポイント
厚生労働省では、働くうえでストレスを感じている人が半数以上にも上るといったデータも出ています。
職場でのストレスの原因はさまざまですが、職場の環境を改善するための取り組みが非常に重要です。
参照:労働者の心の健康の保持増進のための指針|厚生労働省
本章では、企業とメンタルヘルスケアの重要性を2ポイント紹介します。
メンタル不調を原因とした休職者や退職者が増加中
年々、メンタルの不調による労災請求とともに決定件数も増加傾向です。
厚生労働省のデータによると、メンタルの不調により休職または退職した労働者がいる事業所も、労働人数の増加とともに多く見受けられます。
参照:平成26年版厚生労働白書 ~健康・予防元年~|厚生労働省
上の図は、過去1年間にメンタルヘルス不調により、1か月以上休職または退職した労働者がいる事業所の割合を示したものです。
事業所規模が1,000人以上のいわいる大企業と言われる企業では、92%もの高比率でメンタル不調による休職や退職が発生しています。
また、令和5年度の精神障害(統合失調症、うつ病、不安障害など)での労災補償件数は年々増加。
そして、そのうち自ら自決してしまった人数も、過去最高をマークしました。
参照:令和5年度「過労死等の労災補償状況」|厚生労働省
このように、メンタルヘルス不調での問題は、どの会社でも起こりえる、決して珍しくない事柄です。
そのため、メンタルヘルスへの早急な対策が企業にも求められています。
法律での義務化もスタートしている
平成27年12月1 日から「労働安全衛生法」によって、労働者数50人以上の事業場では年に1回ストレスチェックの実施が義務付けられました。
労働者数50人未満の事業場においては、現在「努力義務」となっています。
しかし、重要性が高まっており実施の範囲が広がりつつあります。
現在、中小企業でも社員の高齢化や採用難など、人材確保の面が重要な課題です。
安定した事業継続のため、社員が元気で長く働ける環境づくりの一環として、メンタルヘルスケアに積極的に取り組む会社が増えています。
メンタルヘルスケアを企業で取り組む3つのメリット
メンタルヘルスケアに取り組むメリットは以下の3つがあげられます。
- 生産性の向上
- 経営リスクのマネジメント
- 人材獲得につながる
それぞれを解説するため、取り入れ方を精査してみてください。
生産性の向上
メンタルヘルスケアを実施すると、従業員のストレスや不安を軽減でき、仕事のパフォーマンス向上が期待できます。
初期段階でメンタルの不調に気付くと悪化しにくく、早期回復につながります。
職場環境の改善や人員配置の見直しなど、従業員が働きやすい環境を整えるのも重要です。
職場のコミュニケーションやチームワークの改善もはかれ、働きやすい環境が整うと仕事のパフォーマンスも上がるでしょう。
経営リスクのマネジメント
メンタルヘルスケアには、不調による集中力や注意力の低下を防ぐ効果も期待できます。
起こり得るリスクを回避もしくは損失を最小限に抑えることは、経営を行ううえで非常に重要です。
メンタルヘルス不調によって集中力や注意力が低下すると、通常時よりもリスクの発生率が高まると言われています。
業務内容によっては不調を抱える本人だけでなく、周囲の人々の人命に影響を与える可能性も考えられます。
場合によっては労災請求や民事訴訟などもリスクにも発展するでしょう。
集中力や判断力が正常に機能するために導き、業務上の事故やトラブルが発生しづらい環境を整える目的があります。
人材獲得につながる
メンタルヘルスケアに力を入れると、労働環境を改善でき企業イメージがアップします。
従業員にとって働きやすい環境は、社内外からも高い評価を得れ人材の定着率の向上も期待できるでしょう。
採用活動をスムーズに行え良い人材を確保しやすくなり、離職率の低下も期待できます。
これからビジネスチャンスを掴みに行きたい企業にとって、メンタルヘルスケアの導入は大きな期待ができます。
メンタルヘルスケアの3つの予防策と4つのケア
企業としてどんなメンタルヘルスケアを取り入れればいいのか、具体的な取り組みは厚生労働省発行の「メンタルヘルスケアのガイドライン」に記載されています。
取り組み方の事例には「3つの予防策」と「4つのケア」が重要です。
参照:事業場におけるメンタルヘルス対策の取組事例集|厚生労働省
3つの予防策
3つの予防策では、メンタルヘルスによる不調が起こる前から不調からの復帰までが施策されています。
未然にメンタルヘルスの不調を防止し、なるべく早い段階で発見し措置を行えるよう取り組みます。
万が一不調となった労働者には、安心して治療を行えるよう、細やかな気配りや復帰支援が何より必要です。
4つのケア
4つのケアには以下の取り組みがあります。
- セルフケア
- ラインによるケア
- 事業所内産業保健スタッフ等によるケア
- 職場外資源によるケア
この4つのケアの具体的な事例を紹介します。
ストレスチェックの実施
まず、ストレスチェックの実施が効果的です。
簡易調査票は職場で簡単に使用できる「ストレス調査票」に、社員自身が記入しセルフチェックが可能です。
集計した結果は職場全体の傾向として安全講習会の際、職員に共有すると職場環境の把握や改善に役立つでしょう。
産業医やエリア保健師の設置
メンタルヘルスケアに関する専門家との連携体制を構築すると、さらに良い環境が整います。
必要な時に必要なサポートを受けやすくなるほか、早期対処が実現します。
実際に、職場配置や人事異動などの人事労務管理と密接に関係する要因でメンタルの不調が引き起こされる確率が高いと言われています。
そのため、可能であればエリアごとに1〜2名ずつ配置するのが理想的です。
産業医と連携し各エリアの情報を本社所属の保健師に共有すると、エリア保健師は転勤する社員に対してもフォローが途切れず、継続したメンタルヘルスケアが実施できます。
職場コミュニケーションの活性化
積極的にコミュニケーションを取れる環境は、メンタルヘルス不調の防止・早期発見につながります。
ストレスや悩みなどを抱えたときに相談しやすい、風通しの良い職場が構築できると理想的です。
メンタルヘルスケアの教育研修や情報提供や、ミーティングを充実させるのもおすすめです。
メンタルヘルスケアの実施で気をつけたいポイント
メンタルヘルスケアを導入するにあたり、気をつけたいポイントが2点あります。
- 個人情報への配慮
- 企業全体での知識を深める場が重要
内容をしっかり把握して検討してください。
個人情報への配慮
企業および関係者は、従業員の健康情報を含めた個人情報をしっかりと保護する必要があります。
メンタルヘルスに関しては非常に複雑な問題です。
身近な存在だけに相談しにくいケースも想定されるため、公的な相談施設に依頼する場合も検討しておくと安心です。
状況に応じて、最適な提案ができるよう努めましょう。
企業全体での知識を深める場が重要
メンタルヘルスケアは個人ではなく、企業全体で取り組む必要があります。
従業員それぞれがメンタルヘルスに対した知識があると、不調に敏感に反応できトラブルが深刻化する前に適切な対応を行えます。
初期段階でメンタルの不調に気付けると悪化しにくく、早期回復も期待できるでしょう。
メンタルヘルスケアの窓口である心理カウンセラーに研修を依頼し、講習・研修などの学びの場の提供も効果的です。
「事業所内での取り組み事例集」が厚生労働省からも公開されているため、参考にしてください。
まとめ
メンタルヘルスケアは企業の成長のためにも重要な役割を担います。
一朝一夕では成り立たないため、長期的な取り組みが重要になるでしょう。
今後、どの企業も人材の確保が重要課題になると予想されます。
より良い人材を求めるのも1つの課題ですが、今の労働者を大切に守りながら教育していくのも企業の勤めです。