投稿日：2025年02月26日/更新日：2025年02月26日

ポリコレとは｜重視すべき理由や問題点・具体例を紹介

ポリコレとは、差別や偏見をせずに中立的な表現を通して人種やジェンダーに対する偏見をなくし、平等な社会を目指すための概念を指します。

近年、世界中で注目されている概念ですが「ポリコレの意味がよくわからない」という人もいるでしょう。

この記事では、ポリコレの基本概念や注目される背景、具体例を解説します。

企業での取り組み事例も紹介するため、ポリコレの理解を深めるための参考にしてください。

ポリコレとは

ポリコレ（ポリティカル・コレクトネス）とは、人種や性別などを差別せずに中立的な考えを示す言葉です。

日本語では「政治的正しさ」「政治的妥当性」などに訳されます。

明確な定義はないものの、政治分野だけでなく人種や性別、国籍、宗教、年齢、 障がいなど幅広い場面で使われます。

ポリコレが注目される背景

ポリコレが注目を浴びたのは、1950～1960年代にかけてのアメリカ公民権運動が大本です。

次第に世界に広がり、SDGsにも「ジェンダー平等の実現」や「人や国の不平等の是正」として掲げられました。

ただし、行き過ぎたポリコレは「息苦しい社会を作っている」「表現を制限している」と批判もされています。

ポリコレの具体例

ポリコレは、人種や性別、国籍、宗教、年齢、 障がいなど幅広い場面で使われる言葉です。

ポリコレの具体例を以下に紹介します。

性別や職業に関する表現の例

性別や職業に関して、特定の性別にのみ許された職業や呼び方だと誤解を生まないように、性差に関する表現を撤廃した呼び方に変更された例があります。

学校や企業でも敬称を「〜さん」で統一し、男女を分けずに出席番号をつけました。

また近年では、育児休暇・介護休暇を性別問わず取得できる企業が増えています。

人種や地域に関する表現の例

特定の人種や地域に対する呼び方がポリコレにより改められました。

改められた表現の例を紹介します。

たとえば、アニメなどの映像作品では、登場人物の性別や人種に偏らない配慮をしています。

また、特定の表現があるグループのみを指して差別的なイメージ付けを助長しない表現が使われるようになりました。

服装に関する表現の例

服装に関しては、もっとも個人を表現できる手軽なツールですが、制服やユニフォームなどは個を尊重できないとして、変更が加えられています。

特に、東京オリンピックでのドイツ体操女子チームが従来のレオタードから「ユニタード」に変更して注目を浴びました。

性的指向・性自認に関する表現の例

LGBTQ＋やSOGI（※）の考え方が浸透するにつれて、そうした人々を排斥しない表現をする必要があります。

SOGIとは「Sexual Orientation and Gender Identity」の略で、性的指向と性自認を意味する言葉です。

たとえば、アンケートフォームの性別欄に「どちらでもない」の項目を追加したり、無回答にしたりなどして、生物学的分類と異なる性自認を持つ人に配慮し、自身の性自認に合った回答を可能にしています。

行きすぎたポリコレによる問題

ポリコレが行きすぎた場合におきる問題も理解しておきましょう。

職場での言動がハラスメントととらえられてトラブルに発展したり、映画やアニメ、ゲームに影響が出たりしています。

職場や社会に息苦しさを感じる

ポリコレは、職場のハラスメント予防にも効果がある反面、過剰な反応を示す人も一定数います。

たとえば「髪を切った？」と聞くだけでハラスメントだといわれるケースもあるため、閉塞感をおぼえる人もいるでしょう。

多様な価値観に配慮した表現を推進するのはよいが、炎上や過剰なクレームは行きすぎだという意見もあります。

表現の自由が制限される

アニメや漫画、ゲーム、映画などで配慮をしすぎた結果、作品の本来の意味が失われる可能性もあるでしょう。

配慮をしすぎると創作活動や企業活動に制限がかかり、創造性の退化にもつながります。

表現や登場キャラクターのデザインを誰かが「差別的だ」と指摘してSNS炎上が起き、表現変更がされるケースなどもあります。

ポリコレの実践には、表現の自由と適切なバランスをとらなければいけません。

自由を盾にして何を発信してもよいわけではないことを理解しましょう。

新たな差別を生む可能性がある

ポリコレが特定の視点や意見の抑圧に使われるケースも問題です。

ポリコレを掲げて実施するために、反ポリコレを非難したり、新たな差別を生んでは意味がありません。

ポリコレの実施におけるプロセスや手法、論調に否定的な意見が出るのも多様性であるため、ポリコレをかざして批判を撲滅する行為は、多様性の抑圧になるでしょう。

ポリコレに関する企業の取り組み

最後に、今まででポリコレに対応した企業の事例を紹介します。

特に肌の色に関する表現や、性別に関する表現は数多くの企業が対応してきました。

ファミリーマート

ファミリーマートでは、2021年3月に自社ブランドの女性用下着3種類を自主回収しました。

人種によって肌の色は異なるのに、特定の色を「はだいろ」とするのは「不適切である」と社員や加盟店から指摘されたためです。

また、惣菜シリーズ「お母さん食堂」が「お母さん＝炊事係」と、性別分業制をイメージさせるジェンダー表現であると、高校生たちが2020年に署名活動をおこないました。

その結果、老若男女、すべての世代に幅広く受け入れられる名前・コンセプト・パッケージを検討し「お母さん食堂」と「ファミリーマートコレクション」を「ファミマル」に統合しています。

一連の流れはSNS上で「言葉狩りだ」という批判コメントが相次ぎ、炎上しました。

株式会社オリエンタルランド

株式会社オリエンタルランドでは、園内アナウンスの「Ladies and Gentlemen」「Boys and Girls」を「Hello Everyone」などに変更。

性別を特定しない文言に変更し、性的マイノリティーの来園者などにも配慮しました。

また、JALのアナウンスも2020年10月より「Ladies and Gentlemen」から「all passengers, everyone」に変更されています。

花王

花王では2021年3月以降、全てのブランドで「美白」という表現を使っていません。

花王は、国内で初めて肌の色の多様性に配慮した企業です。

「美白」を取りやめたのは、ユニリーバやジョンソン・エンド・ジョンソン、ロレアルなどの欧米の企業で、黒人差別の抗議運動をきっかけに「美白」「色が白い」などの表現が廃止されたためです。

また、幅広い肌の色に対応するため、ファンデーションの色を従来の2倍である23色に増やしました。

まとめ

ポリコレは、政治や人種、性別、国籍、宗教、年齢、 障がいなどの偏見をなくす取り組みです。

多様性を尊重してすべての人が自分らしい生活を送り、能力を最大限に発揮できる社会を築くために注目された概念です。

しかし、ポリコレが行きすぎると、トラブルに発展したり新たな差別を生んだりと問題もあります。

ぜひ、自分が無意識に差別に加担していないか、この記事をきっかけに考えてみてください。