投稿日:2025年07月17日/更新日:2025年07月17日
【ESG】マテリアリティとは|企業課題がステークホルダーにどう影響するのか?
最近になって、企業が環境や社会に対してどのような取り組みを行っているのかが注目されています。
企業がそうした取り組みを公表する際に使われているのが「マテリアリティ」です。
しかし、マテリアリティがいまひとつ分からない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回はマテリアリティとはどういうものかについて解説します。

マテリアリティとは?
マテリアリティとは、社会・環境・経済に与える影響の中で、優先して取り組む「重要課題」を意味する言葉です。
特に、投資家や顧客、従業員などのステークホルダーにとっても、企業価値に直結する要素の1つ。
ESG投資や経営、サスティナビリティの戦略基盤にもなります。
そのことから、マテリアリティはステークホルダーの意思決定に役立つだけでなく、将来の企業がどのようなものなのかを判断する重要な情報になっているのです。
SDGs
SDGs(Sustainable Development Goals)(持続可能な開発目標)は、2015年に国連で採択された概念です。
SDGsでは、世界のさまざまな問題に企業も積極的に関与すべきとうたわれていることから、各企業がSDGsのどの目標に対し、どのような課題を持っているかということが注目されています。
ESG
ESGとは、企業が長期的に成長するためには、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の3つが欠かせないという考え方です。
世界にはさまざまな課題がありますが、こうした課題を解決するためにもESGとSDGsは密接な関係があります。
CSR
CSR(Corporate Social Responsibility)とは、企業の社会的責任という意味です。
ビジネスの多様化やグローバル化によって、企業が社会や環境に与える影響が大きくなったことから、ステークホルダーや社会に対して責任のある行動が求められるようになりました。
マテリアリティの3つの種類
マテリアリティには大きく分けて3つの種類があります。
- シングルマテリアリティ
- ダブルマテリアリティ
- ダイナミックマテリアリティ
どのようなものかくわしく見ていきましょう。
シングルマテリアリティ
シングルマテリアリティとは、企業がESGに関する課題から受ける財務の影響を考慮したものです。
単に財政面の影響を重視するのではなく、社会や環境に考慮したビジネスモデルを決定するという考えが示されています。
ダブルマテリアリティ
ダブルマテリアリティとは、環境や社会が企業に与える財務的な影響(財務マテリアリティ)と、企業活動が環境・社会に与える影響(環境・社会マテリアリティ)の両方を重視するものです。
財務マテリアリティが主に投資家が必要とする情報に対して、環境・社会マテリアリティは消費者や市民社会、投資家などの幅広い階層の人々にとって必要な情報になります。
ダイナミックマテリアリティ
ダイナミックマテリアリティとは、社会が変化するのであれば、それに合わせて流動的に企業戦略も変えるべきだというものです。
これまで重要にならなかった内容が社会や環境、財務で重要になるという考えから、提唱されるようになりました。

マテリアリティが重要視される4つの理由
マテリアリティが重要視される理由をまとめてみました。
- さまざまな課題への取り組みが企業に求められているから
- 非財務指標を重視する風潮が強まってきたから
- SDGsやESGを重視する投資家が増えてきたから
- エシカル消費の認知度が増えたから
それぞれについてもう少しくわしく見ていきましょう。
さまざまな課題への取り組みが企業に求められているから
これまでの企業活動においては、利益の追求のみが最も重要視されてきました。
ですが、近年では地球の温暖化や環境汚染などさまざまな問題が表面化してきたことから、こうした課題の取り組みが企業に求められるようになったのです。
非財務指標を重視する風潮が強まってきたから
最近では企業を重視するときに、この会社は社会の課題に取り組んでいるかや、環境に配慮した経営を行っているかといった非財務指標も評価の対象となっています。
そのため、単に利益を追求しているだけでは、従業員に意欲的に働いてもらったり、投資家に資金提供を行ってもらったりすることが難しくなってきたのです。
SDGsやESGを重視する投資家が増えてきたから
多くの投資家がSDGsやESGを重視する企業を高く評価し、積極的に投資先として選ぶようになりました。
このことは欧州や北米などで顕著になってきたことから、企業もマテリアリティを重要視するのです。
エシカル消費の認知度が増えたから
エシカル消費とは、社会や環境に配慮して作られた商品を選んで消費することです。
消費者の間でエシカル消費の認知度が高まったことから、社会問題に取り組むことは、企業にとっても自社に投資をしてもらったり、自社の商品を購入してもらったりするメリットがあります。
企業におけるマテリアリティの事例3社
実際に企業はどのようなマテリアリティを設定しているのでしょうか。
- 三菱電機グループ
- ソフトバンク
- 味の素株式会社
それぞれの企業について見ていきましょう。
三菱電機グループ
三菱電機グループは、「事業を通じた社会課題の解決」「持続的成長を支える経営基盤強化」という2つの面から、以下の5つの課題をマテリアリティとして特定しました。
引用:マテリアリティ(重要課題) | 三菱電機 Mitsubishi Electric
三菱電機グループの具体的な取り組みとしては、家電プラスチックのリサイクル、再生可能なエネルギーの活用、AIや自動運転技術を活用したまちづくりへの貢献などがあります。
ソフトバンク
ソフトバンクでは、SDGsを起点とした「自社の重要度」と「外部の重要度」の観点から抽出した課題を評価し、以下の6つのマテリアリティを特定しました。
引用:マテリアリティ(重要課題) | 企業・IR | ソフトバンク
ソフトバンクの具体的な取り組みとしては、テクノロジーやAIを活用した地域創生、情報技術を活用した健康・医療サポート、多様なステークホルダーとの連携による事業推進などがあります。
味の素株式会社
味の素株式会社は、マルチステークホルダーから期待されていること、社会に対して提供していく価値の視点から、以下の6つのマテリアリティを特定しました。
引用:マテリアリティ | サステナビリティ | 味の素株式会社
味の素株式会社の具体的な取り組みとしては、フードロスの削減、プラスチックリサイクル、バイオ医薬製造サービスの強化および領域拡大などがあります。
まとめ
今回はマテリアリティとは何かについて、重要な理由や活用方法、具体的な事例などをまじえながら紹介しました。
マテリアリティが重要視される理由はいくつかありますが、最大の理由は、企業が社会や環境の課題に取り組むことを求められるようになったからです。
また、投資家たちや消費者といったさまざまなステークホルダーにとっても、マテリアリティが企業の価値の判断基準となったことも大きいといえます。
社会や経済の情勢はめまぐるしく変わっていくことから、企業がどのようなマテリアリティを策定し、具体的にどのような取り組みを行っているかは、ますます注目されることでしょう。
