わたしたちができること

投稿日:2024年05月08日/更新日:2024年05月08日

マイクロプラスチック問題とは?海洋生物や人体への影響について解説|わたしたちにできること

「マイクロプラスチック問題って聞いたことはあるけれど、どういう意味だろう?」と、疑問に感じた方もいるのではないでしょうか。

何気なく使っているプラスチック。

新型ウイルスの影響で使い捨ての容器の利用が増え、ゴミとして出されたことにより、さまざまな問題点が浮かび上がっています。

そこで今回は、マイクロプラスチック問題の内容とエコな取り組みについてご紹介します。

マイクロプラスチック問題とは?

マイクロプラスチックとは、5mm以下の微細なプラスチックごみのこと

マイクロプラスチック問題とは、マイクロプラスチックで誘発される環境問題です。

大きさは5mm以下と大変小さいですが、誘発される問題は決して小さくはありません。

さらに、その小さいサイズ故に回収が難しく、問題解決が困難であると言えます。

ことのきっかけは、海洋生物の生態系の破壊です。

魚類、甲殻類、貝類やカモメといった海鳥、アザラシなどの海洋哺乳類が海水に混ざったマイクロプラスチックを誤食してしまいます。

マイクロプラスチックは消化に適していないため、消化不全や胃潰瘍などの症状を引き起こし、海洋生物の命が奪われてしまうのです。

参照:9割の食塩からマイクロプラスチックを検出|NATIONAL GEOGRAPHIC

マイクロプラスチックの2つの種類

マイクロプラスチックは、以下の2つの種類にわけられます。

1次的マイクロプラスチック

1時的マイクロプラスチックは、非常に小さいサイズで製造されたプラスチックです。

洗顔料や歯磨き粉などのスクラブ剤等に利用されているマイクロビーズなどをいい、排水溝などから海に流出されます。

2次的マイクロプラスチック

発砲スチロールやペットボトルなど、大きめのサイズで製造されたプラスチックが、紫外線や波にさらされて劣化、破砕、細分化されたものです。

このように2次的に細かくなったものを、2次的マイクロプラスチックといいます。

2次的マイクロプラスチックになりやすいものの例として、レジ袋が挙げられます。

風に飛ばされやすく、そのまま海に流れ込んで早く劣化し、マイクロプラスチックに変化してしまうのです。

マイクロプラスチックによる影響

現在、世界中で海洋プラスチックゴミが問題視されており、SDGs(持続可能な開発目標)の目標のひとつ「14:海の豊かさを守ろう」を掲げています。

プラスチックは分解されないため、目に見えないほどの極小サイズになっても半永久的に海をさまよい続け、海流に乗って世界中の海に拡散されているのです。

そんなマイクロプラスチックは、海洋生物に限らず、わたしたち人体にも悪影響を及ぼす恐れがあります。

マイクロプラスチックと海洋汚染のつながり

海の中にプラスチック粒が流れているため、回収は極めて困難なうえに、分解されないため海洋中に増えてしまいます。

また、発生量は通常のプラスチックゴミと合わせると、年間で800万トンと言われています。

ジャンボジェット機5万機分の重さと並ぶほどの重さです。

プラスチックの表面には細かな凹凸があるため、そこから有害な化学物質を付着しやすいです。

プラスチック自体にも添加剤が使用されており、その添加剤が海洋汚染の原因にも大きく影響します。

海洋生物に及ぼす悪影響

海洋生物たちは、マイクロプラスチックやプラスチック製品をエサだと勘違いし、そのまま食べてしまうことがあります。

体内に入ったプラスチックが内蔵に詰まってしまうケースや、付着していた有害な化学物質などが体内に蓄積してしまうそうです。

それによって、海洋生物の命が絶たれるケースもあるのです。

実際に起こった出来事だと、フィリピン沿岸に打ち上げられたクジラの死骸から40kgものビニール袋が発見された件や、同じくクジラから7.7キロのビニール袋や海洋プラスチックゴミが排出されたケースもありました。

ほかにもウミガメやイルカ、アザラシ等の死亡例も確認されていて、プラスチックゴミがいかに海洋生物にとって有害なものであるかが伝わるでしょう。

確認できているだけでも、年間300頭以上の被害が出ているとされています。

最悪の場合は海の中で命を絶つケースもあるため、多くの生き物たちが犠牲になっているのです。

人体への影響はどういったものか

化学物質によって汚染された魚を食べると、わたしたちの体内にも化学物質が入ってしまう恐れがあります。

2018年に欧米消化器学会は、マイクロプラスチック片がわたしたち人間に取り込まれていることを証拠として発表しました。

人体への影響はいまだ明らかにされていませんが、がんの発生や代謝性疾患の発症を誘発する可能性のある化学物質も検出されています。

最近の米国の研究結果によると、62個のヒト胎盤のすべてにマイクロプラスチックが発見されたそうです。

付着した化学物質が有害なものに変わる可能性が考えられるため、それぞれの国では対策に取り組んでいます。

参照:研究で検査されたすべての人間の胎盤からマイクロプラスチックが検出された|The Guardian

マイクロプラスチック問題における日本政府の対策

G20が2019年6月に大阪で開催したサミット(G20大阪サミット)にて「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を世界共通の方針としてシェアしました。

「大阪・ブルー・オーシャン・ビジョン」とは、2050年までに海洋プラスチックゴミによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指すものです。

日本政府はこの目標の実現のため、廃棄物管理、海洋ごみの回収およびイノベーションを推進するための、途上国における能力強化を支援していく計画を発表しました。

この計画では、以下の方法が挙げられています。

  • プラスチックごみの回収・適正処理の徹底
  • 不法投棄・非意図的な海洋流出の防止
  • 環境中に排出されたごみの回収
  • 海洋生分解性プラスチックや紙等の開発
  • 途上国等の海洋プラスチックごみ問題に貢献する

また、2022年にプラスチックや資源循環の促進等に関する法律を遂行しました。

「プラスチック新法」と呼ばれており、内容はプラスチックごみの削減とリサイクルの促進を目的としています。

この新法は、プラスチックを規制せず、設計から再利用までの全ての工程で資源を循環させる取り組みです。

サーキュラーエコノミー(循環経済)の考えが採用されており、原則として下記の3Rが掲げられています。

  • リデュース(ごみを減らす)
  • リユース (繰り返し使う)
  • リサイクル (ごみをエネルギー源として再利用)

加えて「リニューアブル(再生可能)」も目標とされています。

日本ではこのような目標を掲げていますが、わたしたちには一体何ができるのか、身近にできる取り組みについて解説します。

わたしたちにできる身近な取り組みとは

マイクロプラスチック削減のために、わたしたちができることは、以下の6つになります。

  • マイバッグやマイボトルの持参
  • ゴミの捨て方は確実かつ、適切に
  • できるだけ包材の少ない商品を選ぶ
  • プラスチック製品を極力買わない
  • 環境に配慮されていない素材の衣類を極力買わない
  • ものを長持ちさせながら大切に使う

それぞれの内容について、解説します。

マイバッグやマイボトルなどの持参

「使い捨て」のものはできるだけ買わない、もらわないことを心がけましょう。

多くの消費者がマイバッグ、マイボトルを使う生活になれば、量り売りの店や給水スポットが増えて、社会全体のごみ削減が進みます

ゴミの捨て方は確実かつ、適切な方法を心がける

ポイ捨てされたごみ、特にレジ袋などの軽いゴミは飛ばされて簡単に海まで運ばれてしまいます。

そのためゴミはルールに従い、適切に出しましょう

なるべく包材の少ない商品を選ぶ

食品・日用品・雑貨などを購入する際は、できるだけパッケージが簡素でゴミを出さない商品を選びましょう。

また、会計のときに過剰包装を断るのも大きなポイントです。

プラスチック製品を極力買わない

使い捨てではなくても、プラスチック製品はやがてゴミになります。

おもちゃ、食器、文房具、収納家具その他あらゆる商品を購入する際は、プラスチック製品よりを避け、木・紙・金属など、他の分解されやすい素材でできた製品を選ぶように心がけましょう。

環境に配慮されていない素材の衣類を極力買わない

化学繊維でできているフリース等の衣類は、洗濯するときにマイクロプラスチック繊維が流出してしまう恐れがあります。

そのため、環境に配慮した素材を使った衣類を選ぶことがポイントです。

ものを長持ちさせながら大切に使う

ゴミを減らす(Reduce)ためには、手持ちのものを再利用(Reuse)することも大切です。

修理して長く使う、洋服をリメイクする、不要になったものは必要とする人に有償・無償で譲渡するなど、さまざまな方法があります。

一昔前の「もったいない」が基本のライフスタイルを思い出して、積極的に実践していきましょう。

一人ひとりの思いやり行動で、美しい海を守ろう!

プラスチック問題は、海洋生物の命を脅かす深刻な問題です。

海の生き物たちが誤食して、そのまま人体に悪影響をおよぼす可能性も考えられます。

また、マイクロプラスチックを食べた魚を食べるわたしたちの体内にも、マイクロプラスチックが取り込まれる可能性があるのです。

そうならないためにも、マイボトルやマイバッグの持参やものを大切にするなど、簡単に取り組むことができる方法を試してみてください。

今回の取り組みは、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」に当てはまります。

一人ひとりの思いやりで、問題解決に導きましょう。