投稿日:2024年05月29日/更新日:2024年05月29日
エシカル消費で持続可能な社会を目指す!消費者・企業としてできることまとめ
私たちの生活に「消費行動」は欠かせないものです。
消費行動とは、物を買ったり食べたりする行動を指します。
では、買い物をするときに、価格や品質、安全性のほかに、その商品がどのようにして作られたかといった背景や、その商品を選ぶと世の中にどんな影響を与えるかなど考えている人はどれくらいいるでしょうか。
近年では、SDGsやサステナブルという言葉が注目されています。
同時に、消費行動のあり方にも変化が起きています。
本記事では、社会や環境に考慮した消費行動であるエシカル消費について主に以下の通り解説します。
- エシカルが必要とされる理由
- エシカル消費の5つの尺度例
- 私たちにできるエシカル消費
- エシカル消費の取り組み事例
消費者や企業が社会的な課題に気付き、日々の買い物や原料調達における選択が社会や環境にどのような影響を与え、自分は何ができるのかを考えるきっかけとしてください。
エシカルとは
エシカルとは、英語の「ethical」で「倫理的」という意味で、その中の「エシカル消費」とは、地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動を指します。
2010年から活動している一般社団法人エシカル協会の公式サイトでは、エシカルを「人や地球環境、社会、地域に配慮した考え方や行動」と定義づけています。
さらに、エシカル消費は、2015年9月に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)のうち、特に目標12「つくる責任 つかう責任」に関連する取り組みでもあります。
参照:エシカル消費とは|消費者庁
参照:エシカル とは ?|一般社団法人エシカル協会
エシカルが必要とされる理由
エシカル消費やエシカル商品が必要とされる理由は世界中でさまざまな問題が存在しているためです。
主な理由として以下の2つが挙げられます。
- 環境問題改善のため
- 社会問題改善のため
それぞれについて詳しく解説します。
環境問題改善のため
1つめは、環境問題改善のためです。
日本では、エネルギー資源や原材料の多くは外国からの輸入がほとんどです。
そして、私たち人間のために大量に商品が生産されています。当然、その分消費量やゴミ焼却量が増え、環境破壊を助長しています。
現在、1年間で処分されるごみの量は4,095万トン、東京ドーム約110杯分に当たります。
このごみの量について、世界銀行は「緊急対策が講じられなければ、世界の廃棄物は2050年までに現在のレベルより70%増加する」と警告しています。
また、ごみを処分するには、広大な土地と多くのエネルギーが必要です。
ごみの処分は環境に大きな負荷を与えるため、一人ひとりがごみの減量に取り組み、環境への負荷を軽減する努力をしなければなりません。
そこで必要なのがエシカル消費です。
エシカルな取り組みを行えば、環境への負担を下げられるでしょう。
社会問題の改善のため
エシカル消費は、人や社会の問題の改善にもつながります。
世界では低賃金で雇われた労働者がいたり、子どもが過酷な環境で労働を強制されていたりするのが現実です。
こういった過酷な労働環境は、商品の価格を抑えようとして違法な労働で低コスト化を図っているために起こっているのです。
エシカル消費を行えば、社会的に苦しんでいる人への貢献のきっかけとなります。
エシカル消費の5つの尺度例
「エシカル消費」というと少し堅苦しく感じるかもしれませんが、消費行動は飲食や買い物など、私たちの行動そのものです。
エシカル消費は、商品選択において安心・安全や品質、価格に次いで「第4の尺度」ともいえるでしょう。
この章では、エシカル消費で応援できることを紹介します。
1.環境
環境への配慮には、以下のようなエコ商品を選んで購入する行為があてはまります。
- エコマークの付いた商品を選ぶ
- エネルギー効率がよく寿命の長いLED電球を選ぶ
捨てるもの、ゴミになるものをいかに少なくするかを考え「使い捨て」に象徴される環境負荷を減らすよう努めましょう。
2.社会
社会問題への解決のためには、フェアトレード商品を選ぶのが重要です。
フェアトレード商品とは、発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に取り引きされている商品です。
近年では、日本でもバリアフリーやユニバーサルデザインなどを積極的に取り入れている商品もあります。
3.人
人への配慮は、主に障がい者支援につながります。
また、世界へ目を向けると、発展途上国では児童労働によってさまざまな製品がつくられている現実があります。
製品を購入する際、エシカルを意識し、児童労働によって不当に生産されたものではない製品を選んで購入する人が増えれば、日本にいながら世界の子どもたちに目を向けた社会的配慮を実践できるでしょう。
4.地域
地域への配慮として挙げられるのが地産地消です。
地産地消は、以下のようなメリットを生み出します。
- 地元の経済活動を支援するといった生産者の保護
- 地元経済の活性化
- 遠距離への輸送がないため、経済的かつ環境的負荷の低減
また、最近では大地震が頻発しています。
被災地等への復興支援を目的に地域の特産物を購入する行為もエシカル消費の1つです。
5.生物多様性
エシカル消費は、さまざまな生物と共存できる持続可能な環境保全を実現するうえで重要です。
エシカル消費を通して、人間と自然界に存在する生物との共存が叶います。また、生物多様性の実現は、環境保護の課題解決にも直結します。
エシカルとサステナブルの違い
近年では、エシカルと同様に「サステナブル」という言葉にも注目が集まっています。
サステナブル(Sustainable)とは英語で「持続可能な」という意味で、環境への負荷が少なく将来世代にわたってずっと続けられる持続可能なあり方を意味します。
つまり、SDGsを達成するためのサステナブルな取り組みのなかで、持続可能な条件の1つがエシカルです。
そして、サステナブルはエシカルの視野をさらに広くしたイメージであり、エシカルな取り組みはサステナブルな取り組みを助長します。
エシカルとCSRの違い
CSRとは企業活動において、社会的公正や環境などへの配慮を組み込み、従業員、投資家、地域社会などの利害関係者に対して責任ある行動をとるとともに、説明責任を果たしていくことを求める考え方です。
参照:CRS(企業の社会的責任)|厚生労働省
つまり、企業は自社の利益のみを追求するのではなく、社会を構成する一員としての役割や責任も果たさねばならないのです。
CSRとは、企業のイメージアップを目的とするケースが多く、対外的で表面的な広告宣伝で終わってしまう可能性もあります。
一方で、エシカルが意味する範囲は企業活動だけでなく、消費者による人や環境などに配慮している行動も含んでおり、高い倫理性のある社会貢献を社会に広める活動であるといえます。
私たちにできるエシカル消費
ここまでで説明してきた通り、エシカル消費はさまざまな社会問題を解決するきっかけとなります。
では、普段の生活で私たちにできるエシカル消費にはどんなものがあるでしょうか。
たとえば以下のような商品を購入することが考えられます。
- エシカル食品
- エシカルファッション
- エシカルグッズ
それぞれどのようなものか、1つずつ解説します。
エシカル食品
エシカル食品(エシカルフード)とは、環境や社会に配慮された食品です。
たとえば、以下のものがエシカル食品に当たります。
- 食品ロス削減のために規格外の野菜を材料にした食品
- 大豆ミートなど動物性の材料を使わず、植物性の原材料のみで作られた食品
- 農薬や添加物を使用せずに栽培された野菜
エシカル食品は身体にやさしいものが多いです。
そのため、エシカル食品は食生活を整えたい人や安全なものを食べたい人におすすめです。
2.エシカルファッション
環境問題だけでなく、労働問題や社会問題にも配慮して素材選びや生産、販売を行っているファッションを「エシカルファッション」と呼びます。
エシカルファッションは人と地球環境に配慮して作られたファッションです。
今までは衣料品や靴・バッグなどの衣料雑貨は、低価格路線が主流でした。
できるだけ低コストで大量生産し、安い価格で販売していたのです。
しかし、最近ではファッション業界全体がエシカルファッションを重視するようになっています。
また、消費者目線でも、エシカルファッションはできるだけ長く着られる素材やデザインであると考えられています。
エシカルグッズ
これまで使い捨てされていたものを繰り返し、ごみの発生をおさえるための商品がエシカルグッズです。
たとえば、以下のものが挙げられます。
- マイバッグ
- エコボトル
- マイストロー
日本では、2030年までにワンウェイ(使い捨て)のプラスチックの排出を、25%抑制することを目指しています。
プラスチック使用製品の提供を辞退したり、繰り返し使用できる製品を活用したりするなど、ライフスタイルの変革が必要です。
企業がエシカル消費を推進する3つのメリット
エシカル消費は、個人の消費者に限った話ではありません。
企業がエシカル消費を推進するメリットとして以下の3点が挙げられます。
- 企業のイメージアップになる
- 新規授業の展開につながる
- 企業が持続的に成長できる
それぞれについて、詳しく説明します。
企業のイメージアップになる
地球環境や社会全体への配慮をしている企業は、長期的な視点で行動できる企業として、消費者はもちろん国の機関や投資家からの評価が上がります。
特に、SDGsに積極的に取り組む企業は、地球の未来について真摯に考え、課題を解消していると評価されるでしょう。
つまり、自社の利益だけでなく、社会全体にとってよい未来を作るために、SDGsに取り組む姿勢は、取引先や消費者からの信頼感の引き上げにつながるのです。
新規事業の展開につながる
地球環境や社会全体に配慮した商品やサービスの検討を通して、新規事業が展開できる可能性があります。
持続可能な社会であるために、世の中のさまざまな問題の解決を目指すビジネスは、今後も増え続けるでしょう。
SDGsに関連する事業が世間に知られれば、ほかの企業と提携してさらに大きな事業に着手できたり、消費者の声を取り入れやすくなったりします。
企業が持続的に成長できる
SDGsの実践で、持続的な未来の構築を目指せば、企業を持続的に成長できるでしょう。
自社の強みを振り返り、できる部分からエシカル消費に関わる商品を展開することは、競合他社と商品や顧客層との差別化につながるため、市場における競争優位性の確保が可能です。
社会問題の解決への取り組みは、自分の業務が世の中の役に立っていると実感できるきっかけにもなるでしょう。そうなれば従業員のモチベーションも向上し、企業の生産性UPにもつながります。
企業がエシカル消費を推進する2つのデメリット
企業が推進するにあたり、メリットが多いと考えられているエシカル消費ですが、デメリットも存在します。
- 導入のためにコストがかかる
- 商品の価値が高くなる
デメリットも正しく理解したうえでエシカル消費を推進しましょう。
導入のためにコストがかかる
エシカル消費に関わる商品を開発するには、第三者機関から認証マークを得る必要があるため、導入のためのコストがかかります。
また、認証マークの取得はハードルが高く、コストもかかるため、認証マーク取得の条件を満たしている商品でも、マークを付けずに販売しているケースもあります。
そのため、企業(生産者)にとっても消費者にとっても経済的負担が大きくなってしまうのはデメリットといえるでしょう。
商品の価格が高くなる
販売価格が高くなり、一般消費者の経済的負担が重くなれば、導入に対する費用対効果が見込めない可能性も生じます。
消費者は「価格帯が高い」と感じ、商品を購入したくてもできないといったジレンマに陥るかもしれません。
また、エシカル消費自体の認知度の低さと認証マーク取得のハードルの高いために、消費者に認証マーク自体の存在があまり知られていないのも現実です。
そのため、認証マークが付いている商品であっても購買につながらないかもしれません。
以下に認証マークの一例を紹介します。
- エコマーク
- 再生紙使用マーク
- グリーンマーク
- ヴィーガン認証
- 有機JAS
- コスモス認証
- 国際フェアトレード認証
このほかにも多くの認証マークがあります。
消費者は買おうとしている商品に認証マークがついているか確認し、購入しましょう。
エシカル消費の取り組み事例
最後に、エシカル消費に取り組んでいる企業の具体例を紹介します。
- 日本マクドナルド
- 株式会社資生堂
- スターバックスコーヒージャパン
自社でエシカル消費に関して何ができるか検討する際の参考にしてください。
日本マクドナルド
日本マクドナルドでは、食品廃棄を可能な限り削減するためにエシカル消費に取り組んでいます。
そのために、顧客が注文してからバーガー類を調理する「メイド・フォー・ユーシステム(MFY)」を開発、2005年に全店舗への導入が完了しています。
その結果、導入前と比較して完成品商品の廃棄は半分以下となり、食品ロスの削減に成功しました。
また、廃食油(使用済みのフライオイル)は、主に鶏の配合飼料として、ほぼ100%をリサイクルしています。
株式会社 資生堂
株式会社資生堂では、スキンケアブランド「BAUM(バウム)」を2020年にローンチし、「カリモク家具」で出た端材をパッケージにアップサイクルしています。
カリモク家具とは、リサイクル材の活用や、CO2排出量削減のための取り組みを行い、環境に配慮した数多くの取り組みを進めているメーカーです。
木製パーツは、レフィル交換すればずっと使い続けられ、家具のように長年愛用して、使いこむほど手になじみ風合いの変化を楽しめる点も魅力的です。
また、化粧品パッケージに木材を使う斬新な試みは、BAUMのテーマ「樹木との共生」を体現し、日本の森林が抱える問題に化粧品を通して興味を持ってほしいという思いが込められています。
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社は、2030年までに廃棄物を50%削減するという目標を掲げています。
達成に向けた取り組みとして、フラペチーノなどアイスビバレッジの店内利用時のグラス提供を実施しています。
グラス提供をした結果、トライアルの時には店内のリユース率が従来の9倍になった店舗もありました。
また、ごみ捨て回数が半減したため、お客様と会話する時間を増やせたのも大きな効果です。
一部店舗では、リユース容器の貸し出しとともにドリンクを提供し、店舗に返却してもらう循環型プログラムを実施しています。
まとめ
本記事では、社会や環境に考慮した消費行動であるエシカル消費について解説しました。
エシカル消費やエシカル商品は、世界中でさまざまな問題が存在しているためにその解決策として必要とされています。
私たちが消費行動を取る際には、エシカル商品の購入やエシカルグッズの使用など、さまざまな方法が考えられます。
また、企業がエシカル消費を推進するのも社会問題の解決の大きな一歩だといえるでしょう。
エシカル消費を普及させるためには、企業や自治体、個人がそれぞれの立場でできることをはじめなければなりません。
私自身も、発展途上国の方が手づくりした商品を購入した経験があります。
大量生産された製品と違い、1つひとつ形やデザインが異なり、温かい気持ちになりました。
商品やサービスを消費する際には、価格だけでなく製造された背景や、社会・環境に及ぼす影響も考えてみましょう。