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投稿日:2024年09月03日/更新日:2024年09月03日

パーム油の問題点は?持続可能なパーム油生産のために消費者にできること

「パーム油」を知っていますか?

パーム油は、スナック菓子やマーガリンなどの食材や、シャンプーや石鹸など、多くの商品に使われています。

本記事では、私たちの生活に欠かせないパーム油を使用するうえでの問題点や持続可能なパーム油の生産のために私たち消費者ができることを解説します。

パーム油とは

パーム油は、アブラヤシという植物から採れる植物油です

主にインドネシアとマレーシアで生産されており、スナック菓子やインスタント麺、マーガリン等の加工食品をはじめ、洗剤や石鹸、化粧品、医薬品など幅広く利用されています。

植物油脂のなかでパーム油の生産が最も多く、ほかの植物油よりもリーズナブルな価格での提供が可能です。

さまざまな食品や原料に使われているため「見えない油」とも呼ばれています

パーム油のメリット

パーム油は、私たちの生活に欠かせない油のひとつ。

食用から非食用までさまざまなものに使用できるため、世界的にも需要が高まっています。

パーム油のメリットは以下の3点です。

  • 大量生産できる
  • 汎用性が高い
  • トランス脂肪酸の代替品になる

それぞれ解説します。

大量生産できる

パーム油の原料であるアブラヤシは通年で実をつけるため、ほかの植物と比較して生産効率が高く大量生産が可能です。

また、一度栽培をはじめればおよそ25年もの間、年中アブラヤシの実を収穫できます

そのため、ほかの植物油生産と比較して、最も効率よく植物油を生産できるため、安価かつ安定した調達が可能です。

パーム油の需要は年々高まっており、世界中の国々がインドネシアとマレーシアから輸入しています。

汎用性が高い

パーム油は一度にたくさん採れるため価格が安く、さまざまな商品へ利用しやすい油です。

食品や化粧品・パーソナルケア用品まで幅広い商品に使われています

たとえば、以下のものにパーム油が使用されています。

  • マーガリン
  • ポテトチップス
  • チョコレート
  • シャンプー
  • 石鹸

すべて日本のスーパーでも入手できる身近な商品で、食品への利用が全体の8割を占めています

トランス脂肪酸の代替品になる

パーム油には、ほかの植物油に比べ、健康への被害が心配されるトランス脂肪酸をほとんど含まれていません

トランス脂肪酸は、悪玉コレステロールを増加させ、多量に摂取すると、動脈硬化などによる虚血性心疾患のリスクが高まります。

特に、ショートニングやマーガリンの食べ過ぎには注意が必要です。

WHOは食品中のトランス脂肪酸の規制を重視し、2022年12月時点では46か国が規制に乗り出しています。

また、日本でもトランス脂肪酸に対する危険性の認知が広がり、代用品としてパーム油が注目されています。

パーム油の問題点

私たちの生活に欠かせないパーム油ですが、環境面や社会面で数々の問題を抱えており、地球規模で深刻な事態に陥っています。

主な問題点は以下の4つです。

  • 熱帯林の破壊
  • 野生動物への影響
  • 人への影響
  • 気候変動への影響

それぞれ解説します。

熱帯林の破壊

パーム油の主要生産国であるインドネシアやマレーシアには、豊かな熱帯林が広がっています。

その熱帯林を、大規模に伐採し、大型のアブラヤシ農園の開発が進んでいるため、農地開発に伴う森林破壊が深刻です。

また、伐採で土壌侵食が進み、農園で使用する有害性の強い農薬や化学肥料による土壌汚染も問となっています。

野生動物への影響

熱帯林が現状したことで、もともと住んでいたオランウータンやアジアゾウが、住処を奪われています

住処だけでなく、生態系が崩れたことで食料がなくなり、アブラヤシ園に食料を求め侵入し、絶滅危惧種の動物が駆除されているのです。

また、森を追われたアジアゾウと人の衝突事故も後をたちません。

人への影響

アブラヤシ農園の開発で、森の中に暮らす先住民が事前に開発予定を知らされず、住む場所を失うケースもあります。

また、インドネシアやマレーシアは、もともと土地の境界があいまいで、土地の権利が企業や政府に認識されていません。

そのため、土地の権利をめぐって紛争に発展するという事態も発生しています。

さらに、アブラヤシ農園には、日雇い労働者などの安価な労働力が欠かせません。

  • 最低賃金以下の給料
  • 厳しいノルマ設定
  • 移民の強制労働
  • 児童労働
  • 農薬散布による健康被害など

これらも社会的に深刻な問題となっています。

気候変動への影響

農園の拡大には、熱帯林の泥炭地の水を抜き、燃やさなければプランテーション開発はできません。

そのため、燃焼の際に温室効果ガスが排出され、地球温暖化が加速している現状です。

また、泥炭地は燃えやすい性質を持っているため、農園ごと大規模な火事につながるケースもあるのです。

このような問題が多いため、気候変動の一旦を担っていると考えられています。

持続可能なパーム油生産のために

さまざまな問題を抱えているパーム油ですが、その利便性や汎用性の高さから、パーム油をまったく使わないのは困難です。

人や地球にも優しい生産環境と製品サイクルを構築するために、以下の点を心がけましょう。

RSPO認証制度

2004年、パーム油の持続可能な生産と利用を目指す国際組織、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)が開かれました。

生産する時の環境や労働者の人権への配慮や企業のコンプライアンスなど、基準を満たした農園で生産されたパーム油には「RSPO」の認証マークをつけています。

日本でもRSPOに加盟する企業が年々増えており、生協やイオンなどの小売業も参入しました

RSPO加盟企業は、2017年の77社から2022年には223社に増加しています。

また、東京オリンピック・パラリンピックでは、全ての物品に対して「持続可能性への配慮を求めた基準」が定められ、認証済みのパーム油を使用するよう求められました。

WWFジャパンの取り組み

WWFは1961年にスイスで設立された、100カ国以上で活動している環境保全団体です。

WWFジャパンでは、持続可能なパーム油の普及をめざし、インドネシアと消費国である日本への働きかけを行っています

パーム油の購買、融資、利用に携わる企業が環境に配慮したパーム油の調達できるよう、RSPO認証パーム油を広めています。

まとめ

本記事では、パーム油を使用するうえでの問題点や持続可能なパーム油の生産のために私たち消費者ができることを解説しました。

パーム油は、私たちの生活に欠かせない商品に使用されており、世界的にも需要が高まっています。

しかし、環境面や社会面で深刻な問題を多く抱えています。

手軽に食べられるスナック菓子や毎日使っているシャンプーにもパーム油が使われており、地球環境や生態系を壊しているかもしれません。

私たち消費者は、RSPO認証製品を選んだりパーム油フリーの製品を選んだりして、環境や人を守る行動を取りましょう