投稿日:2024年09月09日/更新日:2024年09月09日
宇宙天気災害とは?太陽フレアの問題やできる対策、宇宙天気の調べ方
宇宙天気災害とは、太陽の活動によって引き起こされる自然現象が、地球や人類にさまざまな影響を及ぼす災害のことです。
その中でも特に注意が必要なのが、太陽フレア。
この強力な爆発現象は、通信障害や電力網のトラブルを引き起こし、さらには衛星や宇宙飛行士に深刻な影響を与える可能性があります。
本記事では、太陽フレアが引き起こす問題や、それに対する対策、さらに宇宙天気を調べる方法について詳しく解説します。
宇宙天気災害って何?
宇宙天気災害とは、太陽の活動により宇宙環境が変化し、電波の妨害や衛星障害などさまざまな被害がでる災害のことです。
宇宙天気災害以外にも「宇宙天気現象」とも呼ばれています。
太陽の活動にはさまざまな種類がありますが、中でも宇宙天気災害との関係が深い現象の1つとして太陽フレアが挙げられます。
近年、太陽フレアによる被害が多発しており、深刻な問題となっています。
太陽フレアはどのようにして起こるのか?
太陽フレアとは、太陽の表面にある黒点周辺で起こる大規模な爆発現象です。
大規模なものは水素爆弾100万個分にも匹敵するエネルギーを放出します。
これを電力に換算すると、一度の大規模な爆発で全人類が使用する数十万年分に相当するエネルギーが放出されるレベルです。
太陽フレアの発生メカニズムは明らかになっていない点が多いものの、その発生は太陽の表面に現れる黒点を構成する強い磁場と深い関係があるとされています。
太陽フレアによる災害の例について
ここでは、主な太陽フレアによる災害例を紹介します。
1989年 | カナダのケベック州で大規模停電が発生。およそ600万人に影響があった。 |
1991年 | 放送衛星「ゆり3号 a」の太陽電池が劣化。放送可能な衛星テレビチャンネル数が減少する事態に。 |
2000年 | 観測衛星「あすか」が制御不能。 |
2003年 | スウェーデンで停電。およそ5万人に影響があった。観測衛星「みどり 2 号」との通信を断念。 |
2012年 | コロナ質量放出(CME)を観測。地球への影響はなかった。 |
2017年 | 日本で使用されるカーナビやスマートフォンのGPS衛星測位精度が劣化していることを確認。カリブ海で無線通信の障害が発生。南米において航空機の通信が約90分間中断した。 |
2022年 | 衛星インターネットサービス『スターリンク』の約40基の衛星が打ち上げ直後に動作不能。 |
参照:宇宙天気現象とその災害対策の現状|国立国会図書館 調査と情報―ISSUE BRIEF―
今後このような宇宙天気災害の被害を受けると、社会情勢がパニックになるといわれています。
宇宙天気災害がもたらす3つの影響について
宇宙天気災害には、下記の3つの影響をもたらしています。
- 電波障害
- 衛星および送電線への影響
- 宇宙飛行士の放射線被ばく
それぞれ解説します。
電波障害
1つ目は、電波障害です。
太陽フレアの発生により紫外線やX線の電磁波が地球に届きます。
そうすると電磁波などの電波を妨げ、通信などに影響を及ぼす恐れがあります。
- 船舶・航空機無線
- 短波通信、短波放送
- 防災無線、FM放送の障害
船舶・航空機無線に障害が起きた際は、運休や遅延などにより物流が滞るほか、防災無線が使えなければ危険を察知できません。
地震大国である日本では、防災無線が使えないのは大きな問題といえるでしょう。
衛星および送電線への問題
3つ目は、衛星・送電線の運用に支障をきたし、下記の3つのリスクが生じる可能性があります。
- 通信・放送・観測衛星の障害
- 測位システム(GPS)の誤差
- 送電施設に障害
また、この影響により下記のリスクが生じる可能性があります。
- 停電
- スマートフォンの地図アプリやカーナビの精度の低下
- 天気予報のサービスが配信されない
上記の3つのリスクは、社会のシステムを大きく揺るがすとして、近年世界的に危機感を持っている問題です。
なお、太陽フレアが発生しても、地上にいる人への影響はほぼないといわれています。
宇宙飛行士の放射線による被ばく
2つ目は、宇宙飛行士が放射線により被ばくする恐れがあります。
太陽フレアにより高エネルギー粒子が放出されると、宇宙飛行士の被ばくに加えて、人工衛星の誤作動を招く場合があります。
大気圏内では、航空機の乗員の被ばく量が増える可能性も高いです。
太陽フレアにより宇宙飛行士の被ばく量は通常の数十倍になり、船外活動が中止される可能性も考えられます。
わたしたちにできる3つの対策
宇宙天気災害による被害は、通信や電力などに支えられているわたしたちの生活とリンクしています。
宇宙天気災害に備えるために、下記の3つの対策が挙げられます。
- 宇宙天気災害が起きる可能性の高い日は外に出ない
- 停電など万が一のときに備えて、非常食・水・蓄電器などを用意する
- スマートフォンが使えなくなる場合を想定し、ほかの連絡手段を考える
上記の対策は、地震などの自然災害による防災対策にも当てはまります。
宇宙天気の調べ方や見方は?
太陽フレアがわたしたちに及ぼす影響を宇宙天気災害、その天気を事前に確認することはできるのでしょうか?
把握・予測することを「宇宙天気予報」と呼んでいます。
現在は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が、毎日の宇宙天気と宇宙天気予報を公開中です。
「静穏」「活発」など、レベル分けして注意を喚起しています。
参照:ホーム|宇宙天気予報-国立研究開発法人情報通信研究機構-
宇宙災害とSDGsについて
宇宙天気災害は、下記のSDGsの目標に当てはまります。
- 目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
- 目標11「住み続けられるまちづくりを」
それぞれ解説します。
目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、質の高い信頼性と柔軟性のあるインフラ開発が掲げられています。
宇宙天気災害は、インフラに大きな影響を及ぼす災害です。
持続可能なインフラを整えるためには、宇宙天気災害に向けた対策を行う必要があるでしょう。
宇宙天気の観測から災害の予測、対策の実施などを通じてインフラへの影響を減らせると、目標9の達成につながります。
目標11「住み続けられるまちづくりを」
目標11「住み続けられるまちづくりを」は、すべての人が安心して生活できる住居や交通の安全性の改善などが定められています。
わたしたちの生活に欠かせない通信サービスや物流、電気などは、宇宙天気により影響を受ける場合もあります。
住まいや交通もまた、宇宙天気災害により安全性の確保が難しくなることも事実です。
宇宙天気災害を想定したまち・住まいづくりは、目標11に貢献します。
まとめ
宇宙天気災害は、わたしたちの日常生活やインフラに大きな影響を及ぼす可能性があります。
特に船舶やナビを活用する方は、適切な対策を練り、リスクを軽減させるためにも日々の宇宙天気の把握しましょう。
また、万が一のときに備えて非常食・水などの常備、スマートフォン以外の連絡手段を考えるのも大切です。
宇宙天気災害への理解を深め、未来のリスクに備えましょう。