わたしたちができること

投稿日:2024年10月07日/更新日:2024年10月07日

深刻化する空き家問題|解決のための新しい取り組みと成功事例を紹介

昨今「空き家」が全国的な問題となっています。

長年使われない建物は老朽化しやすく、犯罪や自然災害の温床です。

また、相続の際に受け継いだものの、どのように活用すればいいのか迷っている方も多いでしょう。

本記事では、空き家を放置するデメリットや、自治体や企業が行う空き家問題への取り組み、空き家再生プロジェクトの成功事例を紹介します。

空き家の活用に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

空き家とは

「空き家」とは、誰も住んでいない家を指します。

2015年5月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、1年以上住んでいない、または使われていない家を「空き家」と定義しています。

人の出入りがなく、電気・ガス・水道などのライフラインの使用状況がない状況はもちろん、新築・中古を問わず、賃貸又は売却のために空き家になっている住宅、別荘など普段は人が住んでいないものの、定期的に管理されていることが想定される住宅などです。

日本の空き家事情

令和5年住宅・土地統計調査によると、現在の空き家数は900万戸あり過去最多を記録

2018年から51万戸の増加し、空き家率も13.8%とこちらも過去最高です。

また、1993年から2023年までの30年間で約2倍になっています。

空き家は、社会全体の高齢化と少子化が原因で発生し、多くが放置されているのが現状です。

なお、空き家は今後も増え続け、2038年の空き家率は21.1%〜31.5%まで増えると予測されています。

空き家を放置するデメリット

空き家の放置は、デメリットしか生みません。

主に以下のようなデメリットがあげられます。

  • 住宅の劣化・資産価値が低下する
  • 特定空き家に指定される
  • 治安悪化や自然災害による事故につながる

それぞれ解説します。

住宅の劣化・資産価値が低下する

人が住んでいない家は、老朽化が進みやすくなります

さらに人が利用しない住宅は、日常的な清掃がされなくなり、傷んだ箇所や劣化した設備の修繕も後回しになりがちです。

住宅の劣化が進めば建物の資産価値が落ち、売却する際には価格が下がってしまうでしょう。

また、木造の場合は建物の法定耐用年数は業務用で22年、一般的な家庭で33年です。

放置している間に、気付けば耐用年数を過ぎてしまい、無価値になってしまう可能性もあります。

特定空き家に指定される

「空家等対策の推進に関する特別措置法」で定める特定空き家に指定されると、地方公共団体が対象の空き家を撤去・修繕させる命令が下されます

以下の条件に当てはまる、および将来的に当てはまるであろう建築物を指します。

  • 倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある状態
  • アスベストの飛散やごみによる異臭の発生など、著しく衛生上有害となるおそれがある状態
  • 著しく景観を損なっている状態
  • その他、周辺の生活環境を乱している状態(立木の枝の越境や棲みついた動物のふん尿など)

なお、地方公共団体からの命令を無視して放置し続けると、過料、強制撤去などの厳しい措置を受けます。

  • 最大50万円以下の過料の発生
  • その後も改善しない場合、行政代執行による空き家の強制取り壊し

なお、取り壊しにかかった費用は所有者の負担となるため、命令を無視するのは避けましょう

治安悪化や自然災害による事故につながる

最後のデメリットは、治安悪化や自然災害などの犯罪や事故につながる恐れがあることです。

近年、空き家に不審者が侵入し、そのまま寝泊りしているという事例も報告されています。

実際に放火による火災や、小さい子を連れ込んでのいたずらなどの事件も発生しています

また、ネズミやイタチなどが住み着くことで獣害被害が発生し、被害範囲は近隣住民にも及びます。

さらに、台風で外装材や屋根材が飛んだり、地震により倒壊したりする危険性も高くなるため、近隣エリア全体が危険にさらされる原因となるでしょう。

空き家問題への新しい取り組み

2010年頃から、空き家が周辺環境に実害を及ぼすケースが目立つようになり、問題意識が強くなってきました。

そのため、自治体が国と連携しながら対策を行うようになりました。

この章では、自治体による取り組みと企業などによるビジネス化について解説します。

自治体による空き家への取り組み

自治体が取り組む空き家対策の1つに「空き家バンク」があります。

「空き家バンク」とは、自治体が運営するポータルサイトに空き家情報を掲載し、買い手や借り手を募集するサービスです。

空き家バンクは地域への定住を狙う制度のため、利用希望者にもその土地への移住や交流に対する真剣さが問われます。

また、自治体の補助金も数多く用意されているので活用してみましょう。

  • 解体に対する補助金
  • リフォームに対する補助金
  • 特定の用途として使うためのリフォームに対する補助金

地方自治体が主体であるため、各地方自治体のホームページなどで確認するか、役所の総合案内などから相談可能です。

企業などによるビジネス的な取り組み

企業による空き家ビジネスも多くのサービスが展開されています。

  • 民泊経営
  • カフェ経営
  • シェアハウス
  • コワーキングスペース
  • サテライトオフィス

利用者や移住者を増やすことで、地域の活性化や資源化、観光地化が期待できます

また、地域活性化によって、犯罪リスクも減らせるでしょう。

空き家再生プロジェクト(広島県尾道市)の成功事例

近年、全国各地で空き家の活用や再生を軸としたまちづくりプロジェクトが活性化しています。

今回は広島県尾道市の「尾道空き家再生プロジェクト」を紹介します。

尾道市の現状

尾道は、広島県の東部の瀬戸内海の小さな港町です。

瀬戸内海と山々に囲まれ、歴史と文化を感じさせる街並みや建物がたくさん残っており、映画やドラマ、CMの舞台にもなっています。

独特の坂と路地が美しい尾道ですが、深刻な空き家問題を抱えるエリアでもあるのです

空き家の多くは長年の放置により廃屋化し、建て替えや新築が不可能なロケーションにおいて現存する空き家の活用、後世への継承が重要な問題です。

「尾道空き家再生プロジェクト」の活動

尾道空き家再生プロジェクト」は2007年に立ち上げられたNPO法人

街の風景や、昔ながらの人が近い尾道らしい生活を守るため、尾道市生まれの豊田雅子さんが始めました。

尾道空き家再生プロジェクトの目的は以下の5点です。

  • 空き家の活用を通して、尾道らしいまちづくりを実現する
  • 個性的で生活感あふれる尾道独特の建築の面白さや、職人技を多くの人々に伝える
  • 環境に配慮したエコ活動を行い、レトロな尾道らしい街並みを残す
  • 世代間の交流や、新しいコミュニティをつくる
  • 尾道から世界に発信するアーティストを育てる

尾道が住みたいと思ってもらえる町になれるよう、活動を続けています。

「尾道空き家再生プロジェクト」の空き家再生事例

「尾道空き家再生プロジェクト」は、2007年の立ち上げ以来、たくさんの空き家を再生してきました。

好事例の1つである、尾道ゲストハウス「あなごのねどこ」(2012年オープン)

尾道の歴史的建物に触れ、活用しながら次世代に受け継ぎ、尾道に移住してきた若者の活躍の場の創出が目的の、古くて新しい交流スペースです。

レトロな商店街の雰囲気も、ノスタルジックな雰囲気が醸し出されています。

昭和や平成など、古いカルチャーが再び流行を駆け巡っている今、まさに注目のスポットといえるでしょう

まとめ

空き家は、持ち主が放置していると罰則に問われるだけではなく、災害や犯罪のリスクを高める大きな要因の1つ。

しかし、少子高齢化に伴って空き家の数は増えている一方です。

この機会に空き家情報を活用して、地方への移住や事業の立ち上げを検討するのも、人生を豊かにする1つの選択かもしれません。