投稿日:2024年09月19日/更新日:2024年09月19日
学び直す「リスキリング」とは?企業が導入するメリットやおすすめスキルを解説
デジタル化やAIの進化によって、新たな知識や能力が求められる場面が増えています。
その中で経済産業省から「リスキリング」が提唱されました。
リスキングは「学びなおし」を意味する言葉ですが、企業にとってどのようなメリットがあるのかいまいちわからないと悩む担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、リスキリングの概要や企業が導入するメリット、おすすめのスキルを紹介します。
リスキリングを上手に行い、環境変化に柔軟に適応できる企業を目指しましょう。
リスキリングとは
リスキリング(re-skilling)とは「学びなおし」を意味する言葉で、ビジネスにおいては現在の職業・職種とは異なる分野のスキル・知識を身につけ、既存の従業員が対応できる業務の幅を広げることを指します。
リスキリングを提唱した経済産業省では「新しい職業に就くために、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。
参照:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―|経済産業省
リスキリングは、2021年頃からビジネスでも注目されはじめました。
例えば、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略において、新たに必要となる業務・職種に順応できるように、従業員がスキルや知識を習得をすれば企業の成長にもつながります。
そのことから、リスキリングは単なる「学びなおし」ではなく、これからも価値を創出し続けるために必要なスキルを学ぶ点が特徴です。
環境変化に柔軟に適応できる企業へと成長し、結果的に企業の発展につながるでしょう。
リスキリングが注目される理由
リスキリングは、社会や私たちの生活の変化が理由で注目されるようになりました。
主な理由を2点紹介します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
1つめの理由は、組織内でDXの推進が推奨された点です。
DXとは、企業がAI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術を用いて、業務フローの改善や新たなビジネスモデルの創出するだけでなく、過去の技術やしくみで構築されたシステムからの脱却や企業風土の変革の実現を意味します。
AIやIoTが広まったため、これまでの知識や技術が通用しなくなり新しいスキルを持つ人材が必要となりました。
しかし、DXのために必要な高い専門性やスキルを持った人材は不足しています。
そのため、DXに必要な人材を新たに採用するだけでなく、社内で育てる必要が生じました。
コロナ禍以降の働き方の変化
新型コロナウイルスの流行により、私たちの働き方は変化しました。
- 社内での業務がテレワークに変わった
- 顧客とのやり取りが対面からオンラインへ移行した
例えば、テレワークやオンライン中心の働き方に変化したことで新たなスキルを身につける必要が出てきました。
そのため、新たなスキルを身につけなければならない状況です。
企業がリスキリングを導入するメリット
リスキリングは新たなスキルの習得ができるため、従業員の能力の向上に直結します。
しかし、リスキリングを導入するメリットはそれだけではありません。
主なメリットを4点紹介します。
新規事業の創出
リスキリングを導入すると、新規事業の立ち上げや既存事業の拡大が期待できます。
なぜなら、社員のスキルアップから新しいアイデアが生まれ、社員のスキルセットが多様化し、チームや組織全体の視点の幅が広がる可能性が高まるためです。
新しいアイデアが生まれれば、結果的に企業の競争力や生産性の向上につながり、組織全体の対応力が向上するでしょう。
従業員の満足度が向上する
リスキリングは従業員の能力を向上させるため、自己成長やキャリアアップへつながります。
例えば、既存事業とのバランスを考えながら新規事業を立ち上げるには、社内の文化を知っている従業員が取り組む方がスムーズに進行します。
新規事業が成功すれば、仕事へのやりがいや達成感が増し、従業員のモチベーションも上がるでしょう。
業務の効率化が期待できる
リスキリングをDXに活かせると業務の効率化が期待できます。
今まで人の手で行っていた作業の自動化や、、作業工数の大幅削減ができるためです。
たとえば、以下のような効果が期待できます。
- 新しい業務・事業に時間を使える
- 残業代の削減につながる
- ワークライフバランスをとりやすくなる
業務の効率化が実現すると、作業時間や残業が減り、従業員の満足度も向上します。
ウェルビーイング経営にもつながる施策ともいえるでしょう。
採用コストを削減できる
リスキリングによって社内でDX人材を育成できれば、新たに人材を採用する必要がないため金額面での費用の大幅削減が期待できます。
例えばDX人材は、専門性が高いために他の職種の人材に比べて採用が難しく、そのため採用費用も高くなります。
リスキリングにより、社内でDX人材を育成できれば、自社内で完結できるインハウス化を後押しできるでしょう。
また、新たに人材を採用する必要がないため、企業文化の維持もしやすいです。
企業がリスキリングを導入するデメリット
メリットの多いリスキリングですが、デメリットもあります。
デメリットも理解し導入を検討しましょう。
転職のリスクがある
リスキリングにより、従業員が他社への転職を考える可能性があります。
新たなスキルを身につけると市場価値が上がるためです。
リスキリングには人材の成長の機会を提供する反面で、人材を維持するための新たな挑戦も必要です。
リスキリングと同時に、人材維持のために費用のアップや、人材流出による業績への影響も考慮しなければ従業員の転職のリスクがあることを考えておく必要があります。
費用がかかる
新たなスキルを身につけるためには、専門的な教育やトレーニングが必要になります。
専門性が高い教材や質が高い資料は有料であることが多いため、教育プログラムを実施する際には少なからず費用がかかるでしょう。
また、自社内で教育をすすめるのか、外注して講師を雇うのかでも金額は変化します。
しかし、人材を育てる上で必要経費は仕方のないことのため、自社の予算やどれほどのスキルを獲得するのかを考慮して教育をすすめましょう。
必ず成果が出るとは限らない
リスキリングを導入してすぐに成果が出る保証はありません。
新たなスキル習得には時間と労力が必要ですが、習得したスキルをすぐに業務に活かせるわけではないためです。
また、リスキング期間中は、生産性が下がる可能性もあるでしょう。
さらに、日々の業務を行いながら新しいスキルを学ぶための意欲や時間を見つけることは難しく、途中でモチベーションの低下につながる危険性もあります。
リスキリングで学ぶべきスキル
企業が抱えている課題は異なるため、自社の企業戦略にもとづいて学ぶべき内容を決めましょう。
リスキリングは個人の学びなおしやスキルアップではなく、組織のなかで価値を創造できる人材として能力を高める学びが求められています。
持続的な企業価値向上のために、自社の従業員社員がリスキリングで何を学ぶかが重要です。
しかし、企業が抱えている課題により異なるため、自社の企業戦略にもとづいて、学ぶべき内容を決めましょう。
この章では、業界を問わず学ぶことをおすすめするスキルを3点紹介します。
プログラミングスキル
プログラミングスキルは、多くのビジネスシーンで役立つスキルの1つです。
簡単なものはExcelなど表計算ソフトの集計自動化や簡略化、大規模なものなら企業アプリの開発など多岐にわたります。
ほかにも、メールマーケティングを行う際の自動化や装飾、自社顧客管理ツールの開発などさまざまな面に応用可能です。
多くのビジネスシーンで活用できるでしょう。
マーケティングスキル
マーケティングとは、自社の商品やサービスを顧客に届け、利益を生み出し続けるしくみを確立することを指します。
商品開発や宣伝、市場分析など、幅広い活動がマーケティングに含まれます。
近年では、特にデジタル媒体を扱うデジタルマーケティングが重要です。
- マーケティング検定
- Webアナリスト検定
- 中小企業診断士
定期的にマーケティングのリスキリングを行って、従業員の知識をアップデートし、新規顧客の獲得や自社のブランディングを長期的に行いましょう。
SNSやインターネットなど、多くのユーザーが集まる場での顧客行動や心理を学ぶのもおすすめです。
データ分析
データ分析とは、大量のデータから必要な情報を抽出し、経営や営業、市場などの戦略に生かす能力です。
従業員がデータ分析スキルを習得すると、人事データや顧客データなどから課題を発見できるようになり、企業が重宝する存在になるでしょう。
データ分析に関連する資格は以下の通りです。
- データサイエンティスト検定
- G検定
- 統計検定
データを扱える人材を育成できれば、企業としてより効率的な分析が可能になるでしょう。
企業がリスキリング導入において活用できる助成金
リスキリング導入には、十分な資金調達が重要です。
国や自治体では、企業のリスキリング導入を推進するために、助成金を用意しています。
人材開発支援助成金
企業が従業員のスキルアップを目的とした研修に必要な費用の一部を国が補助する制度で、厚生労働省が実施する助成金です。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
以上の4つをはじめ、全部で7つのコースがあります。
助成額は研修内容や形態によって違いますが、最大で1人あたり30万円、補助率は2/3と、大きな支援となるでしょう。
DXリスキリング助成金
企業のリスキリング支援としてよく活用される助成金が「DXリスキリング助成金」です。
「公益財団法人 東京しごと財団」が実施しており、東京都内の中小企業が従業員に対して、DXに関連した集合訓練やeラーニング実施の際に助成金を受け取れます。
申請できる企業には資本金や従業員数の条件があります。たとえば、サービス業の場合は以下の通りです。
- 資本金5,000万円以下
- 従業員数100人以下
- 助成額は1社につき対象費用の3分の2まで、または年間64万円が上限
助成限度額は上限額に達するまで複数回の申請が可能です。
まとめ
ビジネスにおいてのリスキリングは、既存の従業員が、現在の職業・職種とは異なる分野のスキル・知識を身につけることです。
既存の従業員が対応できる業務の幅を広げることが目標で、単なる「学びなおし」ではありません。
リスキリングは新たなスキルの習得ができるため、従業員の能力の向上に直結します。
また近年ではDXが本格化しており、人材の補完や新たなビジネスモデルの創出のためにデジタル関連のスキルが必須です。
企業は国や自治体が用意している助成金を積極的に活用し、導入を検討してください。