深掘りコラム

投稿日:2024年10月28日/更新日:2024年10月28日

”カーボンニュートラル”に向けた取り組み方や企業事例10選

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることです。

現在、世界ではカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが加速しています。

しかし、カーボンニュートラルの実現には、政府や自治体、企業が一体となった取り組みが必要不可欠です。

本記事では、カーボンニュートラルの概要やメリットを解説し、企業での取り組み事例を紹介します。

ぜひ、自社でカーボンニュートラルに取り組む際の参考にしてください。

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、地球温暖化の原因となる代表的な温室効果ガスであるCO2の排出量をゼロにするための取り組みです。

日本では、2020年10月に、当時の菅義偉内閣総理大臣が「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と、所信表明演説の中で述べました。

参照:2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と取組|資源エネルギー庁

これを受けて、環境省では「2050年までに年間で12億トンを超える温室効果ガスの排出を実質ゼロにすること」を目標として、産業構造や経済社会の改新に取り組んでいます。

企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット

企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットは以下の3つです。

  • コストが削減できる
  • 企業のイメージアップになる
  • ESG投資の対象になる

まずは、LED電球や自家発電設備などを活用することで、エネルギーコストを削減できる点が1つ。

また、活動を社内外に広めることで企業イメージのアップや、ESG投資につながります

社内向けメリットには、従業員のモチベーションアップや業績の向上が見込めるでしょう。

一方、社外向けのメリットは、多くのエンドユーザーやステークホルダーへのアピールへとつながり、利益向上や事業拡大が可能です。

企業がカーボンニュートラルに取り組む方法

企業がカーボンニュートラルに取り組むと、多くのメリットが得られます。

では、具体的にどのような取り組みを行えばよいのでしょうか。

この章では、2つの方法を紹介します。

  • 省エネの推進
  • 再生可能エネルギーへの切り替え

どちらも難しい方法ではありません。

それぞれ詳しく紹介します。

省エネの推進

省エネルギーとは、必要なエネルギーを減らす取り組み方法です。

具体的には以下の方法があります。

  • エネルギー使用機器・設備の使い方を見直す
  • 省エネ機器や設備の導入

特にLED電球への変更や、人感センサーによる減光制御、電力出力を制御するデマンド監視装置による最大電力の抑制など、手軽に始められる取り組みがたくさんあります

再生可能エネルギーへの切り替え

再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、地熱といった地球資源の一部など自然界に常に存在するエネルギーを活用する方法です。

再生可能エネルギーは、電力会社やプランを切り替えたり「非化石証書」という環境価値のみを購入したりする手段で導入できます。

非化石証書とは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーや原子力発電といった非化石電源で発電された電力が持つ「CO2を排出しない」という環境価値の部分を分離して取引ができるように証書化したものです。

非化石証書を購入すると、自社で利用する電気に関するCO2排出量を間接的に削減したとみなされます

カーボンニュートラルの実現に向けた企業の取り組み事例10選

最後に、カーボンニュートラルの実現に向けた企業の取り組み事例を紹介します。

自身の企業で導入する際の参考にしてください。

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社は、カーボンニュートラル達成に向けて「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げています

部品調達の物流や車両製造にかかわる温室効果ガス排出量を、2030年までに30%削減を目標とし、そのほかにも、太陽光発電や風力発電、水素などの再生可能エネルギーを使用し、工場からのCO2排出量を抑制する活動を行っています。
参照:Sustainability Data Book(2024年6月)|TOYOTA

日本製鉄株式会社

日本製鉄株式会社は「カーボンニュートラルビジョン2050」を掲げています

「社会全体のCO2排出量削減に寄与する高機能鋼材とソリューションの提供」「鉄鋼製造プロセスの脱炭素化によるカーボンニュートラルスチールの提供」の2つの柱を展開中です。

参照:「カーボンニュートラルビジョン2050」の推進|日本製鉄株式会社

花王株式会社

花王では、2040年までにカーボンゼロ・2050年までにカーボンネガティブを掲げています。

2021年には、国内のすべてのロジスティクス拠点(55カ所)で使用電力100%再生エネルギー化を達成しました。

参考:2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブ実現に向けた活動を加速|花王株式会社

株式会社セブン&アイ・ホールディングス

株式会社セブン&アイ・ホールディングスでは「GREEN CHALLENGE 2050」という環境宣言を掲げています。

達成のために、各事業会社の主管部門からリーダー(執行役員以上)を選出し、グループを横断しての取り組みを推進。

オリジナル蓄電池を活用したEMSの採用や太陽光パネルの設置、オリジナル商品で使用する容器は環境配慮型素材を100%使用などが主な内容です。

参照:セブン&アイグループの環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』4つのテーマを定め、2050年までに実現を目指します。|株式会社セブン&アイ・ホールディングス

大日本印刷株式会社

大日本印刷は2020年3月に「DNPグループ環境ビジョン2050」を策定

持続可能なより良い未来に向けた「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現への取り組みを実施しています。

特にモノづくりについては、人々の暮らしのなかでの利用シーンも視野に入れた上記5つの方針を掲げ、グループ全体でさまざまな施策を推進しています。

参照:カーボンニュートラル実現に向けたDNPの環境配慮技術|大日本印刷株式会社

ナイキ(Nike, Inc.)

NIKEもカーボンニュートラルの実現に向けて「MOVE TO ZERO」を掲げ、さまざまな取り組みを行っています。

2025年までの目標は、以下の3つです。

温室効果ガスの排出量だけではなく、サステナビリティを重視していることが特徴です

参照:MOVE TO ZERO|Nike

パナソニックホールディングス

パナソニックホールディングスでは「Panasonic GREEN IMPACT」の実現に向けて、2030年までに全事業会社でCO2排出の実質ゼロ化を社内外に発信し、CO2ゼロの工場づくりを推進しています。

  • CO2ゼロ工場の拡大:2021年度までに5地域9工場でCO2ゼロ工場を実現
  • 再生可能エネルギー利用拡大:2022年度の自社拠点における再生可能エネルギー導入量は55GWh

上記のように、多くの実績を掲げています。

参照:カーボンニュートラルに向けた取り組み|Panasonic

阪急電鉄株式会社

阪急電鉄株式会社では、駅に起因するCO2排出量を実質的にゼロにする取り組みを進めています。

2010年3月14日に開業し、国内ではじめてカーボンニュートラルを導入した「カーボンニュートラル・ステーション」を実現しました。

具体的な取り組みは以下の通りです。

  • 太陽光発電
  • LED照明
  • 雨水利用
  • 車両の外観に環境をテーマにしたラッピングを施す
  • 車内のポスター枠をすべて環境をテーマに統一する

阪急電気鉄道株式会社では、年間70t排出されるCO2のうち、約36tは太陽光発電やLED照明の導入によって削減を行い、残りの34tは環境価値の購入で相殺し、カーボンニュートラルを実現しました。

参照:~日本初の『カーボン・ニュートラル・ステーション』~阪急電鉄 京都本線「摂津市駅」の開業にあわせた 阪急電鉄(株)との連携による地球温暖化防止メッセージの発信等について(お知らせ)|環境省

三菱重工エンジニアリング株式会社

三菱重工グループは2040年カーボンニュートラル宣言「MISSION NET ZERO」を発表

CO2回収、輸送、転換利用、貯留といったCCUSバリューチェーン全体の最適化を視野に入れ、CO2を効率的かつ安定的に削減するため、実効性のあるソリューション提供と費用対効果の最大化に貢献するとしています。

参照:2040年カーボンニュートラル宣言|三菱重工

セコム株式会社

ホームセキュリティーのセコム株式会社では「セコムグループ カーボンゼロ2045」を発表。

再生可能エネルギーの活用や電動車の導入を行い、2018年度比で45%の削減を目標に掲げています。

参照:「セコムグループ カーボンゼロ2045」実現に向けて|セコム株式会社

まとめ

カーボンニュートラルとは、CO2などの温室効果ガス排出量をゼロにする試みです。

日本では2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています

現在、2015年のパリ協定の合意に基づき、日本以外にも120以上の国・地域が「2050年カーボンニュートラル」を目標に定めています。

しかし、カーボンニュートラルは、政府や自治体の取り組みのみで実現できるものではなく、企業での取り組みも必要です。

実際の企業の取り組みを参考にし、できることからはじめましょう。