深掘りコラム

投稿日:2024年12月09日/更新日:2024年12月09日

ウェルビーイングを測定するための4つの指標と上手に引き出すコツ

人間が充実した生活を送るためには、常に健康な状態を維持しなければなりません。

また、幸福度を高めたい場合も心身ともに良い状態である必要があります。

そこで、ウェルビーイングを高めることができるかが重要です。

ウェルビーイングは数値で見える化できる特徴がありますが、具体的にどのように測定すれば良いのでしょうか。

本記事では、ウェルビーイングを測定するための4つの指標と上手に引き出すコツを紹介します。

ウェルビーイングとは

ウェルビーイング(Well-Being)とは、従業員の健康や高いエンゲージメントや組織づくり、企業の存在意義の達成を目指す言葉です。

ウェルビーイングという用語を初めて使用したのは、世界保健機関(WHO)で、WHOが掲げる憲章の前文において、以下の記載があります。

”健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいいます。”

引用:世界保健機関(WHO)憲章とは|公益財団法人 日本WHO協会

また、厚生労働省では就業面におけるウェルビーイングを以下のように定義付けています。

”働き方を労働者が主体的に選択できる環境整備の推進・雇用条件の改善等を通じて、労働者が自ら望む生き方に沿った豊かで健康的な職業人生を送れるようになることにより、自らの権利や自己実現が保障され、働きがいを持ち、身体的、精神的、社会的に良好な状態になることをさす。”

引用:雇用政策研究会報告書 概要(案)|厚生労働省

ウェルビーイングは、ビジネスにおいて経営の指針として用いられていることも多いです。

実際に、ウェルビーイングの向上により、以下の効果を得られます。

  • 多様な働き方の実現
  • 労働者の主体的なキャリア形成支援
  • 外部労働市場の機能強化
  • 副業・兼業、雇用類似の働き方に関する検討など
  • 企業における人材育成・生産性向上の推進

以上のように、個人だけでなく企業にとってもウェルビーイングの向上がもたらすメリットは大きいのが特徴です。

ウェルビーイングについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

ウェルビーイングの測定に活用できる指標4つ

ウェルビーイングの考えを理解し、実践していても本当に正しい活動を実施しているのかの確証は得られません。

そこで、ウェルビーイングに関する以下4つの指標を用いれば、判断可能です。

  • ギャラップ社の指標
  • PERMAモデル
  • 世界幸福度ランキング
  • OECD(経済協力開発機構)の指標

各指標について、詳しく解説します。

ギャラップ社の指標

世論調査やコンサルティングなどを行っているギャラップ社では、ウェルビーイングを下記の指標に則って計測しています。

ギャラップ社の指標

Career well-being 総合的なキャリアの幸福度
Social well-being 人間関係に関する幸福度
Financial well-being 経済的な幸福度
Physical well-being 心身に関する幸福度
Community well-being 地域社会での幸福度

上記の項目ごとに10点満点で評価して、合計点を算出して不足している項目に沿った対策や施策を検討する形で活用します

具体的には「Career well-being」の点数が低い場合、仕事を通じて経験やスキルを蓄積し、自己実現を図っていくのが苦手と判断できます。

その結果から、企業側としては仕事で有利となる資格の取得をバックアップしたり、適材適所に人員を配置し直したりする施策が有効です。

PERMAモデル

PERMAモデルは、ポジティブ心理学分野の研究を行っているアメリカの心理学者であるセリグマン博士によって考案されたフレームワークです。

以下の頭文字をとって、PERMAモデルと呼ばれています。

PERMAモデル

P(Positive emotion) ポジティブな感情・心身の健康
E(Engagement) 没頭や没入・エンゲージメント
R(Relationship) 良好な人間関係・社内の雰囲気
M(Meaning) モチベーションや意義・生産性
A(Accomplishment) 達成感や満足感・報酬の安定感

各要素は、健康や活力、仕事満足度、生活満足度、コミットメントとの間に正の相関があります

上記項目に積極的に取り組めば、ウェルビーイングが高まり、メンタルヘルス悪化を阻止できるでしょう。

世界幸福度ランキング

世界幸福度ランキングとは、国連の持続可能開発ソリューションネットワーク(SDSN)が発表している、世界幸福度調査のことです。

生活に関する幸福度の評価について、0〜10までの11段階で実施します。

世界幸福度ランキングの優先事項

physical and mental health 身体的および精神的健康
human relationships 人間関係
income and employment 収入と雇用
character virtues, including pro-sociality and trust 向社会性や信頼関係、人格形成など
social support ソーシャルサポート
personal freedom 個人の自由
lack of corruption 汚職や不正のない平等さ
effective government 効果的な政府指導

世界幸福度ランキングを活用することで、身体的および精神的健康や人間関係、収入と雇用などのサポートを行えます。

近年ではフィンランドが幸福度第1位を維持する一方で、日本は50位前後にランクインしています。

参照:World Happiness Report 2023|SDSN

OECD(経済協力開発機構)の指標

OECD(経済協力開発機構)が2011年より公表している、「OECDより良い暮らしイニシアチブ(OECD Better Life Initiative)」もウィルビーイングを測る際に参考となります。

大きく分類して、物質的生活状況・質1・質2の3大要素で構成されており、ウェルビーイングを測定できます

OECD「良い暮らしイニシアチブ」

物質的生活状況 住宅
所得と富
雇用と収入
生活の質 社会とのつながり
教育と技能
生活の質 環境の質
市民生活とガバナンス
健康状態
主観的幸福
個人の安全
仕事と生活のバランス

具体的には、各要素をアンケートに取り入れて、従業員の健康や生活の質の実態を数値化し計測する形が一般的です。

参照:経済協力開発機構(OECD)|外務省

ウェルビーイングの測定方法と引き出すコツ

ウェルビーイングの測定方法は、主にアンケートの実施とツールの使用方法があります。

それぞれの測定方法について、より詳しくみていきましょう。

アンケートを実施する

手っ取り早くウェルビーイングを測定する方法として、従業員に対してアンケートを実施する方法があります。

自社でウェルビーイング測定に役立つ4つの指標を取り込んだアンケートを作成して、実施することで測定可能です。

仕事に関することだけでなく、プライベートの内容も含めると良いでしょう。

アンケート作成時に憂慮するポイントは、以下のとおりです。

社内アンケートで本音を引き出す方法

アンケートでは、いかに率直に本音を引き出せるかが重要です。

本音を引き出すためには、以下の点を考慮してください。

  • 目的を明確にする
  • 匿名方式で実施する
  • 回答リスクを伝える

アンケートを実施する際には、実施する上で、ウェルビーイングを測定するためのアンケートであることを伝えることが重要です。

また、匿名方式で実施することによってより回答しやすい雰囲気が生まれるメリットがあります。

ただし、匿名でも誰が回答したのかが把握できてしまうリスクもあるので、回答リスクについてもしっかりと伝えましょう。

アンケートを作る際のコツ

アンケートを作成する際には、以下のコツを掴んで作成してください。

  • 心理的な効果を理解しておく
  • 回答の順番を考える
  • リッカートスケールを使う

心理的な効果としては、心理バイアスと正解バイアスを考慮して設計が必要です。

心理バイアスとは、質問文が特定の回答を誘導するような内容の場合、本音とは異なる回答となってしまうこと。

正解バイアスとは、回答者が自分に求められている回答を予測してしまい、本音とは異なる回答をすることです。

設問を作成する際には、上記に注意して作成すると同時に、設問の順番も良く考える必要があります。

また、回答の選択肢は「リッカートスケール」が多く採用されています。

「まったく満足していない」から「大変満足している」のような選択肢が複数設定されている回答方法のことです。

選択肢の数は5つが一般的ですが、多い場合は最大で7つを目安にしましょう。

中央値を設定することで、回答者の心理的負担を減らし、より本音を引き出しやすくする効果が期待できます。

ツールを活用する

指標を測定するためのツールが存在しており、ツールを導入すれば手間やコストをかけずに簡単に測定可能です。

主なツールとしては、以下が有名です。

  • MEASUREMENT幸福度計測
  • Well-Being Circle
  • PERMA診断(PERMA-Profiler)

各ツールについて、詳しく解説します。

MEASUREMENT幸福度計測

MEASUREMENT幸福度計測は、アンケートに回答するだけで幸福度が把握できるサービスです。

アンケートはブラウザ上で実施可能であり、インターネット環境があればどこでも手軽に実施できます。

また、測定結果の提示だけでなくウェルビーイングを向上させるためのガイダンスも受けることが可能です。

それぞれの従業員に対する改善策が提示されるので、適切なセルフケアの推進が行えるメリットがあります。

Well-Being Circle

Well-Being Circleは、一般社団法人ウェルビーイングデザインと慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科ヒューマンラボとの共同開発により誕生したツールです。

ユーザ情報を行った後に、72問のアンケートに答えるだけで32項目のウェルビーイング項目をチェック可能です。

すでに、12万人以上の方が診断を受けた実績があり、日本最大級の幸福度診断としておすすめです。

PERMA診断(PERMA-Profiler)

PERMA診断は、PERMAモデルをベースとして、スタンフォード大学生物学研究員ジュエリー・バトラー博士とメルボルン大学社会心理学科准教授のマーガレット・L・カーン博士により開発されたツールです。

PERMA診断の日本語版としては、金沢工業大学心理科学研究所が翻訳・作成・公開したものが有名です。

23項目で構成されていて、それぞれの項目に対して11個の選択肢より該当するものをひとつ選んで回答する内容となっています。

企業とウェルビーイングの重要性

現代の日本において、労働人口の減少や定年退職の年齢延長といった、長く健康で働くためには適切な職場環境が重要となっています。

そこで、企業側としてもウェルビーイングに取り組むことが重要視されているのです。

ウェルビーイングを意識することで、従業員の満足度向上だけでなく外部の潜在的な人材にアピールできる効果もあります

実際に、経済産業省が公表している「健康経営の推進について」では、従業員の働き方や健康が重視する傾向があり、配慮された企業へ就職したいとの回答が多いというデータとなっています。

次いで、雇用の安定や福利厚生の充実、企業理念・使命に共感できるかであったり、やりがいを重要視していたりする結果となっているのです。

さらに、総合人材サービス会社のパーソル研究所が発表したデータによれば、個人の社会的・身体的・肉体的な部分の健康を後押しするウェルビーイングは、お互い正の相乗効果が期待できるという結果となっています。

まとめ

企業が各種施策によってウェルビーイングを実現できているかについては、定期的に測定することが重要です。

また、単純に測定するだけでなく得られたデータを用いて改善につなげられるかが鍵となるでしょう。

ぜひ自社でも、アンケートやツールを活用してウェルビーイングを推進してください。