投稿日:2025年03月18日/更新日:2025年03月18日
東北地方の伝統工芸品を紹介!魅力や取り組み、おすすめの若手工芸士も
日本各地にはさまざまな伝統工芸品があります。
どれも古くから受け継がれてきた、歴史と技術が詰まった魅力ある工芸品ばかりです。
高級品といったイメージを持つ方も多いですが、手軽に便利な類似物が手に入りやすい時代だからこそ「本物で上質なものを長く使う」丁寧な暮らしは日常生活を豊かに彩ります。
そこで今回は、東北地方の伝統工芸品やそれぞれの魅力について解説します。
記事の後半では、伝統的な技術と現代のニーズをかけ合わせた魅力的な工芸品を生みだすおすすめの若手職人も紹介しているため、ぜひ最後までチェックしてください。

伝統工芸品とは?
伝統的な素材や技術・技法で作られている工芸品を「伝統工芸品」と呼びます。
伝統工芸品は各地域の文化や風習を表現しており、職人の高い技術が必要です。
そのため、価値が国内外問わず高く評価されており、有名な作り手のものは美術品として扱われます。
工芸品は主に手作業で制作されたものを指します。
しかし時代のニーズに合わせ、伝統技術を用いた工芸品として大量生産を取り入れているケースもあるのが現状です。
伝統的工芸品とのちがい
工芸品のなかでも、経済産業省が指定するより厳しい要件をクリアしたものを「伝統的工芸品」と指します。
伝統的工芸品の指定要件は以下のとおりです。
- 地域の文化や歴史との関連性
- 職人の高度な技術や手間の反映
- 伝統的な技術や制作方法
- 保護・伝承の必要性
伝統的工芸品は生活や地域経済の発展を目的とした要件が定められています。
地域の文化遺産としての価値がある伝統的工芸品は、後世への継承・保存が重要です。

東北の代表的な工芸品は?
東北地方には伝統工芸品が多く伝わっています。
中でも代表的な伝統的工芸品は以下のとおりです。
地方名 |
伝統的工芸品 |
青森 |
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岩手 |
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宮城 |
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秋田 |
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福島 |
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山形 |
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木材や竹、漆、石、鉄などの自然素材が多く使用された工芸品が多い特徴があります。
東北の寒冷地の厳しい環境下で生まれた工芸品は、実用性と自然との調和が融合した作品が多く高い評価を受けています。
東北の伝統工芸品が抱える問題とは?
伝統工芸品産業は年々規模が縮小しており、深刻な状況です。
主な問題点は以下のとおりです。
- 後継者不足
- 需要の減少
- 原材料・用具等の不足
需要の減少や後継者候補不足などが問題視されています。
なかでも後継者問題は特に深刻です。
雇用条件が十分に整備されていない小規模な事業所が多く、雇用形態や若者の労働観は以前と大きく異なっています。
そんななかで金銭面での後継者候補の途中離脱、職人の高齢化による引退も重なり伝統的技術・技法の継承が危機的状況を迎えています。
さらに、生活様式の変化や安価な輸入品の増大により、需要が低迷している点も要因の1つです。
後継者問題が重要課題
参照:経済産業省説明資料|経済産業省
伝統的工芸品の生産額と従業員数は、年々減少傾向です。
職人の高齢化に伴い職人数も減っていますが、そんななかでも若い世代や女性工芸士が奮闘しています。
女性伝統工芸士シェアは徐々に増加傾向にあり、伝統的工芸品産業での女性が活躍中です。

若い職人が奮闘中!東北の伝統工芸品作家
職人の高齢化が進むなか、若い工芸士が奮闘しています。
工芸品が歩んできた歴史を残しながらも、現代の感性・流行を取り入れたデザインがどこか懐かしくあたたかい魅力を醸しだしています。
今回は若手の作家工房と6人の職人さん、あわせてSNSも一緒に紹介しているため参考にしてください。
秋田:秋田銀線細工|矢留彫金工房
秋田銀線細工は、直径0.2ミリメートルほどの非常に細い銀線を使用し、繊細で上品な模様や細工をつくります。
矢留彫金工房は若手女性3人が立ち上げた工房で、アクセサリーや装飾品などを製作。
特別な日に身につけたいデザインから日常使いできる華やかなアクセサリーなど、1つひとつが手作業で機械には出せない精巧さが特長です。
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秋田:樺細工|荒川慶太郎
樺細工は桜の樹皮を用いて作られる工芸品です。
代表的な製品は茶筒・茶櫃等のお茶道具類、茶だんすなど。
中でも、祖父から3代で後を継ぐ荒川慶太郎さんが日々研鑽に励んでいます。
樺細工伝統工芸展での入賞や秋田県知事賞も受賞した経験があり、独特の光沢や味わい深い色合いが特徴的です。
秋田:曲げわっぱ|仲澤恵
見た目の美しさやナチュラルさや、ご飯が冷めても美味しくキープできる点から、近年注目度の上がっている「曲げわっぱ」も秋田県の伝統工芸品です。
SNS映え・殺菌効果があり、お弁当箱のイメージが定着していますが、若手職人の斬新なデザインの商品も生まれています。
業界初の女性独立を果たした仲澤恵さんの商品は、レジンでデザインされたぐい飲みやトレーなど、現代のニーズに合わせた点が特長です。
ワークショップなどを展開し、今後さらなる育成に力を入れている職人さんの1人です。
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福島:会津塗|ほくるし堂 二瓶由布子
会津塗は、経済産業大臣・国の指定伝統的工芸品にも指定された福島県会津地方に伝わる漆器です。
室町時代から伝わる会津塗に新しい風を吹き込んでいるのが、ほくるし堂の二瓶由布子さんです。
北欧をテーマに絵付けされた漆器製品は新しく、若い世代にもより身近に感じられます。
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岩手:南部鉄器|菊池飛鳥
岩手県の伝統的工芸品にも選ばれている南部鉄器は、重厚で深みのある味わいが魅力。
現代のニーズやライフスタイルに合わせた急須や鍋などが人気の傾向です。
南部鉄器業界は他の伝統工芸業界に比べ、次世代の職人が少しずつ増えています。
菊池飛鳥さんが製作する南部鉄器は、伝統と現代の融合された斬新なデザインが特徴です。
新しい視点から生み出した作品は、国内外から高い評価を得ています。
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岩手:南部鉄器|佐々木奈美
同じく、南部鉄器の若手工芸士さんをもう1人ご紹介します。
女性工芸士である佐々木奈美さんの製品は、女性らしい繊細さが特徴的です。
自然をモチーフとした優雅なデザインに、南部鉄器の新しい可能性を感じます。
職人の若返り化から、今後さらに新しいデザインが生まれそうな南部鉄器業界にも要注目です。
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伝統を継承すべく新たな取り組みも実施中
各地方でも、伝統を継承すべくさまざまな取り組みを行っている最中です。
以下では「山形県」と「秋田県」のケースを紹介します。
山形県
山形県では、形打刃物や山形張子(はりこ)、こけしなどの約20種の伝統工芸品が継承されてきました。
しかしどの業種でも高齢化が進み、後継者の確保に難航し職人は減少傾向です。
中でも、以下の業種は特に職人の減少が危ぶまれ、いずれも3人に満たない現状です。
- 和傘
- 漆器
- 鋸(のこぎり)
- 特技木工(臼や杵〈きね〉、まな板など)
最重要課題は、新たな担い手の確保、継続的な雇用、職人の育成を図り伝統工芸を存続させることです。
そのため、2018年度に地域課題解決型のふるさと納税の募集をはじめました。
過去5年間で計1千万円以上の寄付金が集まり、伝統的工芸産業の後継者育成補助金や修行者支援給付金、職人と大学生との交流事業資金として活用しています。
秋田県
秋田県では伝統的工芸品に使用する「木地」の原材料確保対策を進行中です。
木地の生産や継続に向けたマニュアルの確立、木材の収集、木工旋盤を用いた検証を実施しています。
東北特有の木材や特産品に触れ、学ぶような体験コンテンツに着眼している取り組みもあります。
地元民だけでなく、観光客へのアピールも実現可能です。

まとめ
日本各地にはさまざまな伝統工芸品があり、どれも古くから受け継がれた歴史と技術が魅力です。
東北地方の工芸品は、寒冷地の厳しい環境下をモチーフとし、実用性と自然の調和をイメージした作品が多い特徴があります。
本物で上質なものを取り入れて、より日常をアップデートしてみませんか?
現代のニーズやライフスタイルに合う製品も多く出ているため、ぜひチェックしてみてください。
