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投稿日:2025年06月15日/更新日:2025年06月15日

関東の伝統工芸品を解説!課題や魅力あふれる若手工芸士まで紹介

日本各地には、その土地の特性を活かした工芸品があります。

伝統工芸品はお土産としても非常に人気が高いですが、近年では「よいものを長く使いたい」といった丁寧な暮らしを求めるニーズから注目度が上がっています。

物がありふれている現代だからこそ、愛着が湧く品を使い続けることが重要です。

そこで本記事では、関東地方に注目し伝統工芸品を解説します。

伝統工芸品が抱える課題や、伝統と現代のニーズに沿った新しい感性が魅力の若手工芸士も紹介しているため、最後までチェックしてみてください。

伝統工芸品とは?

伝統工芸品とは、長年にわたって受け継がれてきた職人の技術を活かし、手作業で作られる工芸品を指します。

陶磁器、織物、木工品、金属工芸品など、さまざまな分野の工芸品があり、地域ごとに独自の特色を持ちます。

【伝統工芸品の定義】

  • 職人の手作業による製造
  • 地域の歴史や文化に根付いている
  • 長い年月をかけて技術が継承されている
  • 素材や工程にこだわりがある

そのため伝統工芸品は、まさに職人の技術と歴史が詰まった「手仕事の結晶」ともいえるでしょう。

伝統的工芸品とのちがい

「伝統的工芸品」とは、経済産業省が指定する特定の基準を満たした工芸品を指します。

すべての伝統工芸品が「伝統的工芸品」に認定されるわけではなく、生活の豊かさや地域経済の発展を目的とした、厳しい基準をクリアしたものが認定されます。

【伝統工芸品の定義】

  • 100年以上の歴史があり、伝統的な技術・技法が使われている
  • 主に手作業で製造されている
  • 地域の特色が反映されている
  • 一定の市場(需要)が存在している
  • 伝統工芸士などによる技術の継承が行われている

これらの基準を満たすと「伝統的工芸品」として国が認定したことの証明となり、ブランド価値の向上が可能です。

関東の代表的な伝統工芸品とは?

参照:伝統的工芸品|経済産業省関東経済産業局

関東地方にも、さまざまな伝統工芸品が継承されています。

江戸時代から続く伝統工芸品が多く存在し、現在も職人の技術が受け継がれています。

それぞれの工芸品には独自の歴史と魅力があり、日常生活にも取り入れやすいアイテムが豊富なのが特徴です。

特に東京では数多くの工芸品が伝わっており、生活文化の中心地であったことがよく分かります。

関東の伝統工芸品が抱える問題とは?

関東地方の伝統工芸品が抱える問題は以下のとおりです。

  • 需要の低迷
  • 後継者不足
  • 原材料や生産用具の不足
  • 生活者の価値観の変化
  • 情報不足

なかでも「原材料の不足」と「後継者不足」は非常に重大な課題として、早急な対応が求められています。

まず、伝統工芸品は一定の地域でつくられてきたため、原材料もその周辺地域の特徴を生かしているものがほとんどです。

しかしその原材料が枯渇しはじめており、業界でも今後の継続に大きな危機感を持たせています。

原材料に関しては、さまざまな取り組みを各地で行っていますが、産地内の原材料となる植物が安定的な利用ができるようになるまで一定の期間が必要です。

後継者問題では、職人の技法を絶やさないよう早急に「労働環境の改善」をメインに、後継者の育成を図り技法の継承をめざす必要性があります。

古きよきものをなんとか伝え続けようと、各市町村でそれぞれ試行錯誤を進めている最中です。

若い職人が奮闘中!関東の伝統工芸品作家を紹介

そんななか、関東地方でも若い工芸士が伝統工芸品を広げるためにも奮闘中です。

現代のニーズに合うようアレンジをしたり、デザインを凝らし、SNSを使用しながら伝統工芸品のよさを伝えています。

今回は関東地方で活躍する5人の若手工芸士を紹介します。

甲州印伝(山梨)|山本裕輔(やまもと ゆうすけ)

 

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2018年に甲州印伝の伝統工芸士(総合部門)の認定をうけた山本裕輔さんは、現在総合部門では国内唯一の伝統工芸士です。

甲州印伝は山鹿革に漆で模様を施した革製品で、西暦400年代に高麗より我が国へもたらされたと『日本書紀』に記されている歴史の深い工芸品です。

山本さんは伝統技術を継承しつつ、新しい作品作りに取り組んでおり、各種メディア出演や講演活動を通じて甲州印伝の魅力を広めています。

印傳の山本 – 工芸士紹介

箱根寄木細工(神奈川)|清水 勇太(しみず ゆうた)

江戸時代後期に始まった箱根寄木細工は、樹木の自然な風合いを生かした精緻な幾何学模様で知られます。

清水さんの作風は、伝統を受け継ぎつつも、ポップでモダンな印象で木目の風合いや手触りが優しいのが特徴です。

作品の一部は都内の保育園などでも使用されており、自然のやさしい風合いや肌触りが子どもの素直で豊かな感性を刺激します。

若手職人が新たな境地へ、重鎮たちが後押しする寄木細工発祥の地

箱根寄木細工るちゑ – 箱根寄木細工るちゑ

江戸節句人形|中村宗光

若手甲冑師として期待される中村宗光さんは、平成10年より「宗光」を襲名しました。

平成20年に「伝統工芸士」に認定され、内閣総理大臣賞・青年優秀技能賞を受賞した経験豊富な工芸士です。

中村氏の作品は、伝統的な技法を継承しつつも、現代の感性を取り入れたデザインが特徴です。

特に住宅環境が以前と大きく変化した現代では、節句人形のサイズも求められるニーズが異なります。

中村氏の江戸節句人形は、老舗人形店を通じて提供されており、伝統と革新を融合させた作品が目を引きます。

五月人形の匠たち

東京銀器(東京)|上川 宗達(かみかわ そうたつ)

 

東京銀器の12代目継承者であり、宗達アートクラフトを設立している川上さんは、伝統を守りながらも、新しい挑戦を続けています。

2011年に経済産業大臣指定伝統的工芸品東京銀器伝統工芸士の認定を受け、インスタライブなどを通じて、現代の感性を取り入れた作品を発信中です。

さらに、父である上川宗照は、現代の名工・伝統工芸士・黄綬褒章作家として活動中です。

親子で伝統技術を研鑽し、国内外からも注目されています。

宗達アートクラフト

伝統工芸士、東京銀器12代継承者、上川宗達さんの新しい挑戦【日本工芸コラボトークvol.6】

江戸切子|山田のゆり

最後に紹介するのが埼玉県・草加市の切子工房「ミツワ硝子工芸」の山田のゆりさんです。

2017年匠なでしこ認定、2020年に最年少で日本の伝統工芸士に認定されています。「江戸切子新作展」にて受賞経験が多数あり、江戸切子に対する深い愛情と、伝統を尊重しつつも新しい表現に挑戦しています。

江戸切子は、江戸時代後期から続く東京発祥の伝統工芸品で、ガラスに繊細なカット(彫刻)を施した美しい模様が目を引きます。

日本らしい吉祥文様が描かれており、グラスや器など幅広い製品が展開されているため、日常使いしやすいのも特徴です。いつもの食卓が華やかに演出できます。

Artisan Interview 5 — 山田のゆりさん(ミツワ硝子工芸)・後編

まとめ

関東地方では、数多くの工芸品が継承されてきました。

江戸時代頃には東京を中心に、さまざまな分野が発展したと伝えられています。

工芸品を見ると、その時代風景も予想できるのも楽しみ方の1つです。

気になる方はぜひ、工芸士の商品紹介ページも覗いてみて下さい。

本記事があなたのお役に立てば幸いです。