投稿日:2025年07月11日/更新日:2025年07月11日
【現代奴隷】7月30日人身取引反対世界デー!人身売買の現状と世界・日本の状況を解説
悲しいことに、世界では人道を無視した劣悪な犯罪行為が行われています。
特に、弱い立場にある人の権利を奪うことになる「人身売買」は非難されてしかるべきものです。
人身売買は、世界だけでなく日本でも起きており、身近に潜む犯罪として知られています。
では、実際に人身売買の実情はどのようになっているのでしょうか?
本記事では、人身売買の現状や各種対策について解説します。

人身売買(人身取引)の概要と具体例
人身売買(人身取引)とは、弱者を搾取する目的で人を売買・移送する重大な人権侵害行為です。
具体的には、暴力・脅迫・詐欺などの手段で人を支配下に置き、売春や労働、臓器摘出などを強要します。
「人身売買」と「人身取引」は、同じ言葉として使われがちですが、人身売買の場合は女性に対しての暴力や性的搾取のことで、人身取引は国際条例において国際組織犯罪として位置付けられている言葉です。
臓器売買
日本を含む多くの先進国では、臓器の斡旋に関する規制が存在しており、臓器の提供や対価として利益を得ることを禁止されています。
しかし、実際は莫大な利益をもたらすため世界的に違法な取引が横行しているのです。
臓器売買が行われている背景には、移植のために臓器を必要とする人がいることと同時に、臓器を提供する被害者側の貧困がある点も見逃せません。
一部の発展途上国では、親が金品を得る方法として臓器売買を生業としている組織に子どもを売ってしまうことも。
また、子どもが病院などから連れ去られ、人身取引される場合もあります。
性的搾取
大人の性的欲求を満たすことを目的として、人身売買のターゲットとなる子どもや女性たちが多く存在します。
人身売買された子どもや女性は、売春や風俗店での強制労働などを強いられたりするなど、性的搾取の被害が後を絶たない状況です。
性的関係の強要のみならず、毎日のように深夜まで労働を強いられたり、監視されたりすることで、過酷な生活を強いられている実情があります。
さらに、国外に人身売買され後ろ盾がない状態で苦しんでいるケースも少なくありません。
また、性的搾取の被害に遭うと自分の意志で行っているわけではないのに偏見の目に晒されるケースが多いです。
これにより、社会復帰が困難になる可能性があり、性的搾取を受けた被害者は心に大きな傷を抱えて生きていかなければなりません。
強制結婚
強制結婚やポルノ制作の目的で、人身売買が行われるケースも少なくありません。
目的は多岐にわたるものの、物乞いする子どもたちをターゲットとして人身売買保護する必要性を訴えた報告書が存在しています。
特に、アフリカでは矯正結婚が深刻な状況となっているのが実情です。
小学生ほどの児童と成人男性の結婚が発生する主な背景として、経済的な要因が挙げられます。
人身取引により女の子と金品を交換して、生活費を得るという家庭が少なくありません。

世界と日本の人身売買(人身取引)の発生状況
人身売買や人身取引は、世界各国で発生しており日本も他人事ではない状況です。
ここでは、世界と日本の人身売買の発生状況を紹介します。
人身売買は身近なものとして認識し、改めて対応が必要であることを理解しましょう。
世界の人身売買発生状況
具体的な数値は把握できないものの、世界では約4,030万人が人身売買や人身取引の被害にあっています。
4000万人というとイメージが難しいですが、具体例をいくつかあげてみましょう。
- 東京都の人口(約1400万人)の約3倍
- 東京ドーム(収容人数:約55,000人)に約727回満員(毎日満員でも2年かかる)
- カナダ(約3900万人)やポーランド(約4100万人)の人口とほど同じ
また、国際労働機関(ILO)のデータによると、人身取引の犠牲者はアジア太平洋地域が最も多く全世界の62%を占めている状況です。
続けて、アフリカ地域で23%、ヨーロッパと中央アジアが9%、アメリカが5%、アラブ諸国が1%と続いています。
国際人権法律事務所であるグローバル・ライツ・コンプライアンスによれば、中国では北朝鮮から脱北した女性や少女をターゲットとしてとした人身取引ビジネスが急成長。
北朝鮮から脱北してきた人は、中国で発見されて強制送還されるのを恐れ、逃げられない立場に追い込まれています。
この状況により、性的虐待や強制労働、強制結婚のターゲットにされているのが実情です。
日本の人身売買発生状況
日本においても、世界と比較すれば件数は少ないものの人身売買が発生している事実があります。
警視庁が公表しているデータによると、令和4年の人身売買による被害者は46人、検挙件数は83件、検挙人数は37人でした。
参照:第1-5-14図 人身取引事犯の検挙状況等|内閣府男女共同参画局
2018年以降に広げてみると、8割以上が日本人であり、6割ほどが18歳未満です。
日本はアジアにおける経済大国であるため、人身売買の受け入れ国となってしまいやすい傾向があります。
さらに、技能実習制度により来日する外国人が人身売買として悪用されるケースも少なくありません。
事実、過去に技能実習生の立場を悪用して違法な時間外労働を課していたとして、受け入れ側が検挙された事例があります。
人身売買に対する取組み
人身売買に対して、過去から各国で様々な取組が行われています。
ここでは、具体的な取り組み内容について解説します。
「醜業を行わしむるための婦女売買取締に関する国際協定」(1904年)
本協定は人身取引に対して世界で初めての国際条約であり、ヨーロッパ内の12ヵ国が締結されました。
後に、本格的に人身取引に対応するために誕生した「婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約」のベースとなっている協定として有名です。
「醜業を行わしむるための婦女売買禁止に関する国際条約」(1910年)
1904年に締結された協定のアップデート版の位置付けで、1910年に誕生しました。
本条約はヨーロッパ内の計13ヵ国において締結され、1904年版よりも締結国が増えている特徴があります。
「婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約」(1921年)
「醜業を行わしむるための婦女売買取締に関する国際協定」の内容を包括する条約として、国際連盟によって採択されたのが本条約です。
売春とそれに伴い女性と児童の人身売買を禁止するものとなり、28ヵ国で締結されました。
日本も、1925年12月15日に批准書を寄託して、同日効力を発効し12月21日に公布されることで本条約に加盟しました。
しかし、対象となる年齢はすでに娼妓取締規則において満18歳としていたことで、条約の年齢に関する第5条条項である21歳未満を禁止という内容とアンマッチが生じていたのです。
これについて留保扱いとし、イギリスやフランスに見習って朝鮮半島や台湾、関東租借地を包括しないことを宣言しています。
「人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約(人身売買禁止条約)」(1949年)
本条約は、売春とこれを目的とする人身売買を禁止する目的で、国際連合において採択された国際的な人権に関連する条約です。
82ヵ国が加盟しており、売春宿経営やその未遂行為について禁止する内容が盛り込まれたのが特徴です。
「奴隷制度廃止補足条約」(1956年)
「奴隷制度廃止補足条約」は、奴隷や農奴、女性の自由意思に反する結婚の禁止、そして児童労働を含む奴隷制度全般や奴隷貿易などを国際法により禁止することを目的として制定された条約です。
現在124ヵ国が加盟しており、従来の条約よりもさらにグローバル化が進んでいる特徴があります。
一方、日本は署名も批准もしていません。
「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(国際組織犯罪防止条約)」(2000年)
「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(国際組織犯罪防止条約)」は、2000年に国際連合総会で採択された、通称「パレルモ条約」と呼ばれている条約です。
人身取引や密入国、銃器などの国際的な組織犯罪に対応するために制定され、日本は2017年に締結しています。
重大な犯罪の実行についての合意や犯罪収益の資金洗浄を犯罪化すること、そして条約の対象となっている犯罪に関連して犯罪人引渡手続を迅速に行うよう努めることなどが規定されています。
「人身取引議定書」(2003年)
「人身取引議定書」は、国際組織犯罪防止条約を補完することを目指した議定書として2003年に国連総会において採択されています。
日本の場合、条約が定めている組織犯罪に対する国内法整備が遅れていた状況であり、議定書の締結に至っていなかったが2017年に国内法整備に伴い締結しています。
人身取引議定書では、人身取引は犯罪であることを締約国に義務付けており、被害者の保護や送還、出入国管理に関する措置などについて規定しています。

毎年7月30日は「人身取引反対世界デー」
毎年7月30日は、人身取引反対世界デー!
2013年12月に開かれた国連総会において、7月30日は人身取引反対世界デーとすることが制定されました。
2014年より、啓発イベントやキャンペーンが行われています。
人身取引反対世界デーの目的
人身取引反対世界デーは、国や個人に人身取引との闘いに取り組むむように、そして支援するよう促すためのキャンペーンです。
人身取引反対世界デーに各種メッセージを発することで、より人身取引がクローズアップされ、それを是正されることが目的となります。
過去の人身取引反対世界デーの内容
2024年の人身取引反対世界デーには、ベトナムで公安省(MPS)、ベトナム女性連合(VWU)などが主催した啓発イベントが行われました。
VWUと共同で制作したアニメーションフィルムの公開や、カウンセリングの質の外部評価などが実施されています。
2020年には、認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパンがWE Talk “SOCIAL”と称して無料オンライン講座を開催。
貧困について考えることからスタートし、人身取引についての知識向上や実際の支援活動について学ぶことができるイベントとなっています。
まとめ
人身売買は、世界各国で被害が発生している状況であり、日本でも発生している犯罪です。
世界的な取組を見せており、すでに100年以上も前から条約などの整備が進んでいるものの、まだ完全に抑えることができていません。
人身取引反対世界デーなどの取組みにより、より人身売買の実情を知ると同時に撲滅に向けた対応が必要となります。
