投稿日:2025年08月21日/更新日:2025年08月21日
街がデータで動く時代”スマートシティ”とは?仕組みや国内事例をわかりやすく紹介
スマートシティとは、AI(人工知能)やIoT(モノをインターネットにつなぐ仕組み)、ビッグデータなどの先端技術を活用し、住民にとってよりよいサービスと生活の質を提供する都市です。
近年では、日本でも各地でスマートシティの導入が進んでおり、少子高齢化や地球環境問題などの課題解決の手段として注目を集めています。
この記事では、スマートシティの定義やスーパーシティとの違い、導入の背景や活用されている技術、国内の具体的な事例をわかりやすく解説します。

スマートシティとは
スマートシティとは、AIやIoTなどの先端技術を活用して、住民の生活の質を向上させる都市です。
この章では、政府におけるマートシティの定義やスーパーシティとの違いを解説します。
スマートシティの定義
スマートシティとは、ICT(情報通信技術)を活用して都市の課題を解決し、住民の暮らしを快適・安全・持続可能にする都市のこと。
交通、エネルギー、行政、福祉などを効率化し、環境負荷の低減や地域活性化を目指します。
そのため、仮想空間と現実空間の融合によって経済発展と社会的課題の解決を実現する社会「Society 5.0」の実現の場とされています。
スマートシティとスーパーシティの違い
スーパーシティーは、スマートシティーの進化版。
スマートシティーがICT技術で交通やエネルギーを効率化するのに対し、スーパーシティーは行政手続きや医療、教育など生活全般をデジタル化し、住民の意思に基づいて未来型サービスを一括提供する点が特徴。
また、法制度の特例も活用し、より大胆な社会変革を目指すのが特徴です。
スマートシティが生まれた背景と注目される理由
スマートシティが生まれた背景と注目される理由は、おもに以下の3点です。
- 少子高齢化にともなう労働力の減少
- SDGsの実現
- 経済の発展・地球環境への配慮
スマートシティは、都市がかかえる課題を解決するための手段として多くの自治体や企業が取り組み、注目を集めています。
1つずつみていきましょう。
少子高齢化にともなう労働力の減少
日本の少子高齢化による労働人口の減少は深刻です。そのため、スマートシティの先進技術による解決が期待されています。
たとえば、リモートワークの普及や業務のDX化を行えば、居住地域にとらわれずに働けます。その結果、都市部の人口集中を解消し、地方への移住が促進できるでしょう。
また、自動運転車やロボットなどの導入によって労働力を補える可能性もあります。
SDGsの実現
スマートシティの実現は「誰一人取り残さない」ことを目標に掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の達成に寄与します。おもに以下の3つの目標に関する課題の解決が期待されます。
- 目標11(住み続けられるまちづくり):データやAIで交通渋滞緩和や防災対策強化
- 目標16 平和と公正をすべての人々に:スマートシティの取り組みはすべての人々を包摂した平和な社会を実現し、すべての国で持続可能な開発を実施
- 目標1 あらゆる場所の貧困を終わらせる・目標8 働きがいもある持続可能な経済成長とすべての人々に対する働く機会を促進する:スマートシティの実現により、貧困を終わらせ、すべての人々に富と繁栄をもたらす
スマートシティは、そこで生活する人を誰ひとりとして取り残さずに、暮らしやすい持続可能な都市を目指すものであり、人間中心である考え方です。そのため、SDGsの理念と重なり、目標達成のための手段といえます。
地球環境への配慮・経済の発展
スマートシティとは、地球環境の保護と経済発展の課題解決に向けた新しい概念です。
ICTを使ってエネルギーの使用を効率化し、以下の達成を目的としています。
- 廃棄物の減少
- 地球温暖化対策
- 資源の効率的な利用
- 再生可能エネルギーの活用
IoTやAIなど先端技術を導入し、効率と生産性を高め、新たな産業の創出や雇用の拡大などを通して都市の経済成長に貢献します。
スマートシティに使われる代表的な技術
都市のスマート化を実現し、住民の生活の質の向上をはかるには、以下のような先端技術の活用が不可欠です。
- データ連携基盤
- ICT(情報通信技術)
- IoT
- AI(人工知能)
ひとつずつみていきましょう。
データ連携基盤
データ連携基盤とは、さまざまなIoTやICT、AIなどのテクノロジーが効果的に連携するために必要な技術です。
さまざまなジャンルと民間、自治体がデータを効果的に連携し、生活の利便性が上がるでしょう。
たとえば、後期高齢者の通院対策として、データ連携基盤を活用しています。通院予約や遠隔医療などの地域包括ケアと配車システムを連携させ、高齢者の通院サポートを可能にしています。
ICT(情報通信技術)
ICTとは、情報通信技術や情報伝達技術などを意味する技術です。財政難や少子高齢化による人材不足のため、ICTの活用が重視されています。
たとえば、医療分野のオンライン診療にICTを活用しています。遠方で通えない人や離島に住んでいる人々にも最新の医療の提供が可能です。
IoT
IoTとは、センサーやデバイスがインターネットを介して相互に接続される技術です。アナログな情報をデジタルデータに変換し、システムで取り扱いやすくします。
IoTにより、都市全体のリアルタイムデータ収集ができ、遠隔操作やアプリなどの連携が可能になります。
たとえば、車にIoTを導入すれば、位置情報や走行状況などのデータから、危険運転の制御が可能です。
また、スマート照明では、周囲の状況にあわせて明るさを調整し、エネルギーの消費をおさえます。
AI(人工知能)
スマートシティにおいて、AIは自治体のサービス提供に使われています。
都市運営の効率化や意思決定の迅速化を支援する技術です。
たとえば、防災計画を支援するAIモデルでは、緊急時の住民の意思決定をサポートします。
また、AIチャットボットを使った市民サービスの提供も行っています。職員の労力の削減や住民の利便性向上などが期待できるでしょう。
スマートシティの事例
日本では2017年頃からスマートシティの優良事例の認定が政府によって行われています。
この章では、国内のスマートシティの取り組み事例を5つ紹介します。今後の取り組みの参考にしてください。
埼玉県さいたま市
さいたま市では「スマートシティさいたまモデル」に取り組んでいます。「スマートシティさいたまモデル」は、市民生活の質向上と社会課題の解決を目指す取り組みです。
人とのつながりを強化し、先端技術を活用しながら快適な都市生活の提供を目指しています。
さいたま市では駅を核にし、だれもが移動しやすく人を中心に最適化された都市空間・環境の形成をコンセプトにしました。「大宮駅周辺・さいたま新都心周辺地区」「美園地区」をさいたま市における先行モデル地区として取り組みを推進しています。
参照:スマートシティさいたまモデル「美園地区におけるスマートホーム・コミュニティ」の取組|国土交通省
兵庫県加古川市
兵庫県加古川市では「誰もが豊かさを享受でき、幸せを実感できるまち加古川」を目標に、ICTを活用したスマートシティプロジェクトに着手しました。
たとえば、高齢者や障害のある人などでも移動に関する情報が容易に入手できるようにして都市機能を強化しています。
乗り捨て可能な電動自転車のレンタサイクルを導入し、交通手段を持たない人でも生活しやすい環境を整備しました。
参照:加古川市市マートシティー実行計画|国土交通省
香川県高松市
香川県高松市では「スマートシティたかまつ」を推進しています。デジタル技術を活用し、地域全体の利便性の向上が目標です。
たとえば、IoTなどの技術でデータの収集・分析を実施する共通プラットフォームを構築しました。
共通プラットフォームによって防災・福祉・交通など、さまざまな分野のデータをオープンデータとして配信しています。水位や潮位、避難所情報などを確認できるようになり、防災への早期対策につながるでしょう。
参照:スマートシティたかまつ推進協議会令和6年度年次総会| スマートシティたかまつ推進協議会事務局
北海道札幌市
北海道札幌市では、運動の習慣化や健康寿命を延ばすためにスマートシティをはじめました。
札幌市が推進する「健幸まちづくり推進プロジェクト」では「歩数促進」に取り組んでいます。スマートフォンアプリを活用した歩数計測や移動軌跡データなどを取得して人の動きをシュミレートし、施設配置や交通施策など計画立案の参考データに活用しています。
参照:スマートシティ実現に向けた札幌市の取組と目指す姿|札幌市まちづくり政策局ICT戦略推進担当部
福島県会津若松市
福島県会津若松市は、2011年に起きた東日本大震災をきっかけに、ICTを活用した持続可能なスマートシティ構築を推進しています。
会津若松市では、児童や生徒全員にタブレット端末を配布しました。デジタル教材やオンライン授業を通じて個別最適化された学習を実現しています。
参照:「スマートシティ会津若松」の取組とビジョン|会津若松市企画政策部 企画調整課スマートシティ推進室
まとめ
スマートシティは、先端技術やデータを活用して都市や地域の課題を解決し、人々の暮らしの質を向上させる新たなまちづくりのかたちです。
スマートシティは、国の政策や自治体の取り組みとして進められ、SDGsの達成や地域活性化にも寄与するとして期待が高まっています。
今後もますます進化していくスマートシティの動向に注目し、自分たちの生活がどのように変わっていくのかを考えましょう。
国内のスマートシティの事例も紹介したため、今後の取り組みの参考にしてください。
